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小笠原満男が子供達に伝える主張力。
「違うと思うなら言葉にすればいい」
 

text by

池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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photograph byHirokazu Ikeda

posted2019/12/22 08:00

小笠原満男が子供達に伝える主張力。「違うと思うなら言葉にすればいい」<Number Web> photograph by Hirokazu Ikeda

ブラジルの子どもたちのサッカーに触れて、かつての経験を回想した小笠原。勝つために必要なものを改めて実感したようだ。

ぶつかることによって多くを学ぶ。

 いつも、前提があった。

「自由にやっていいぞ」

 そう先輩に言われて多くのチャレンジをした。それなのに怒られる。言っていることと違うじゃん。いつもそう思っていた。

「俺自身、たくさんぶつかった。でも、今だから分かることだけど、それによって多くのことを学んだ。この時間にこのプレー、この場所でこのプレーは間違っている。そう言われ続けることで、だんだんとサッカーを分かっていった。当時はチームのことなんて一切考えず、いつも自分がやりたいことを主張していた。でもそうすることで、一つひとつサッカーを分かっていけたんだと思う」

 主張することは、自分の考えを相手に伝えること、とも言える。ブラジルの子どもたちのピッチ上での主張は、小笠原にとって自らの若かりし頃を思い出させたのかもしれない。

自分の言葉に生じる責任。

 特に前線の選手とディフェンスラインとのやりとりは激しかった。

「ラインもっと上げろよ!」

「前からプレスにちゃんと行くなら上げてやるよ!」

 ケンカや言い争いに見える口調も、一方は何くそと思いプレスをかける。一方はプレスをかけているのを最後方から見て、「やれるじゃん」とラインを上げる。お互いがお互いの主張を行動で示すことで、チームは成り立っていった。小笠原自身、その積み重ねによって、全体がより良い方向にまとまっていくのを体感し、タイトルを獲り続けてきた。

「まず言葉にしてみるのはいいことだと思う。相手に自分の考えが伝わるし、何より言った自分に責任が生まれる。それに、どうしたらチームがうまくいって、試合に勝つことができるのかを、みんなで考えるキッカケにもなる。そういうやり取りの積み重ねは、試合になれば必ず結果として出るものだから」

【次ページ】 「間違っていてもいいんだよ」

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小笠原満男
鹿島アントラーズ

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