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館山昌平「野球は遊びの延長だった」
小中学生の怪我のリスクを考える。

posted2019/12/20 08:00

 
館山昌平「野球は遊びの延長だった」小中学生の怪我のリスクを考える。<Number Web> photograph by Sports Medical Compliance Association

小中学生の指導者への新たな評価基準となる「ベストコーチングアワード」。第1回となる今年度は全国41チームの野球チームが表彰された。

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谷川良介

谷川良介Ryosuke Tanikawa

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Sports Medical Compliance Association

 野球界に新たな指標が設けられた。

 子どもたちの将来を見据えた指導、育成を推奨するスポーツメディカルコンプライアンス協会(SMCA)が主催した「エニタイムフィットネスPresents ベストコーチングアワード2019」の表彰式が行われた。

 同賞はSMCAが指導者を対象に設けた評価基準をもとに、最新の指導方法や怪我防止の取り組みを行なうチームを表彰する新しい試みだ。「エントリーしたすべてのチームに当事者意識を持ってもらうため」(SMCA代表・中野司)とあえて最優秀賞などは設けず、3段階で査定。筒香嘉智らを輩出した堺ビッグボーイズ(大阪)など全国41チームが表彰された。また、特別功労賞には子どもたちの障害予防と育成を目指し、独自の球数ルールなどを設ける「SUPER PONY ACTION 2020」を制定した一般社団法人日本ポニーベースボール協会(理事長・広澤克実)が選出された。

 今後は野球に留まらず、多くの競技においてメディカル、コンプライアンスの知識を普及していく。

小学生の約半数が肘痛を経験。

 この日、もっとも注目を集めたのは、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師の講演だった。古島医師はプロアマ問わずスポーツ障害に広く精通しており、彼のもとを訪れた多くの学生たちの事例や手術映像を使いながら、過度な投げ込み、長時間練習など古い慣習に囚われる育成年代の指導体質に警鐘を鳴らした。

 そこでは、小学生年代での由々しきデータが提示された。

 トミー・ジョン手術(内側側副靱帯再建術)の権威でもある古島医師が示した1つに、小学校の甲子園とも呼ばれる「マクドナルド・トーナメント」でのデータがある。出場した小学6年生のうち約半数近くが肘痛を経験、およそ3割が既に病院での治療を受けていると答えたのだという。

 またこの世代のトップが集結する侍ジャパンU-12でさえも、内側靭帯に障害をもつ選手は全体の67%に及ぶ。肘の外側の軟骨が剥がれてしまうOCD(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)の数字こそ低かったが、OCDになった子の多くはU-12に選ばれていないのが実情だ。OCDは発症時に痛みを感じ難く、そのまま進行すれば手術に至る場合も多く、競技に支障をきたすのはもちろん、日常生活にまで影響を及ぼす可能性もあるという。

【次ページ】 学童期の怪我が大きなリスクに。

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