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内田篤人が川崎に敗れて話したこと。
「俺はまだ31歳だから。31だよ」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images

posted2019/10/10 17:00

内田篤人が川崎に敗れて話したこと。「俺はまだ31歳だから。31だよ」<Number Web> photograph by Getty Images

内田篤人が鹿島で担っているものは大きい。それだけに本人の悔しさも大きいのだろう。

「自分はベンチの選手として契約していない」

 この日内田はコイントスで、ピッチサイドを変えた。それには、内田なりのゲームプランがあった。

「久しぶりの試合出場だった(右MFの)レアンドロに、前半ベンチ前で気持ちよくプレーしてほしいと思った。そして、フロンターレといつもと違う感じでやりたかった。後半、耐えなければいけなくなったときに、サポーターが後ろにいるほうが頑張れるんじゃないかと。まあでもサポーターが後ろにいて、2点獲られちゃったけど」

 前半10分、そのレアンドロのアシストで先制点を奪い、長い守備時間もサポーターの声を背になんとか耐え抜いた。けれど、最後の最後に想定外の失点が続いた。

 1-1で迎えた残り10分間。鹿島の指揮官は、内田の代わりにボランチの名古新太郎を投入。ボランチを務めていた小泉が右へ入る。低下していた中盤の展開力を立て直す目的だったのだろう。

 しかし逆に、79分に投入された川崎の大島僚太がボールをキープし、そこから供給されるパスで攻撃スピードが増し、リズムも大きく変化していた。

 もしも内田がいれば失点が防げたのか? それは誰にもわからない。けれど、その場所に直前まで立っていた本人が「俺がいたら守り続けていられた」と思うのは当然だろう。それがピッチに立つプロとしての矜持だ。

「自分はベンチの選手として契約していないし、そりゃやりたいよ。でも、怪我の経歴とか出場時間だとかを見ると、仕方がない部分もあるのかもしれない。だけど、もっとちゃんとやりたいし、やらなくちゃいけない。金をもらっているんだから」

「俺らは仕事でやっているからね」

 確かに鹿島は、粘り強く耐える試合が得意なチームだ。けれどこの日はミスが多く、選手同士が激しく言い合うシーンもあり、不安定さが漂い続けていた。

「試合をしながら、ああしよう、こうしようと言い合うのは絶対にあること。それができないなら、(プロの選手を)止めたほうがいい。今日も(永木)亮太と(チョン・)スンヒョンが言い合っていたけれど、韓国人だし、日本語が100パーセントわからない部分があったのかもしれない。

 俺のドイツ時代にそうだったけど、何を言っているのかわからなかったりうまく伝えられなくても、『ああしてくれ』『こうしてくれ』と言いあうのはすごく大事だと思う。なぁなぁで終わるのが一番良くないこと。俺らは部活でサッカーをやっているわけじゃなくて、仕事でやっているからね。勝たなくちゃいけない。

 アウェイで勝ち点を持って帰らなくちゃいけないというミッションのなかでやっているから。お互いの意見がぶつかるのも当然のこと。多少激しくなって乱暴な言葉になっても、多少手が出てもいいんだよ。シャルケで散々見てきたから。フンテラールとジョーンズが殴り合いみたいになったり。別にいいと思うよ」

 サッカーは仕事なんだと発する内田の口調は強かった。

【次ページ】 負けも勝ちも引きずらない。

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