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広島中継ぎ・中村恭平を覚醒させた、
家族、筋トレ、「理論的な正解」。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKYODO

posted2019/09/17 19:30

広島中継ぎ・中村恭平を覚醒させた、家族、筋トレ、「理論的な正解」。<Number Web> photograph by KYODO

先発からセットアッパーに転向して、一軍に定着した中村恭平。2017年に女優の清水ゆう子と結婚し、今は2児の父でもある。

技と体の充実が、心の落ち着きを生んだ。

 投球フォームの安定で球速が安定。スライダーの精度が上がったことで、自信を持って腕を振れるようになった。継続したウエートトレーニングによって「全体的に強くなったら思い切り腕を振ってもぶれなくなった」。技と体の充実が、心の落ち着きを生み、心技体がバランスよく磨き上げられた。

 4月12日の一軍昇格から、一時コンディション不良で戦列を離れながらも一軍に定着している。昇格当初は第2先発のような立場だったが、次第に評価を上げて、立場も変わった。9月11日中日戦で、過去8年で登板した試合数に到達した。

 昨年の今ごろは、自らの去就を案じていた左腕は、今では上位争いをするチームのセットアッパーだ。

「(セットアッパーには)最初は緊張していた。でも投げるポジションが違っても打たれちゃいけないことに変わりはない。敗戦のポジションでも打たれちゃいけないし、今のポジションでも打たれちゃいけない。結局どこでも打たれちゃいけないんですよ」

 人はすぐに変われない。ただ、立場の劇的な変化に、中村恭は中村恭らしく向き合っている。

「(今の立場は)しんどいのはしんどいですけど、昨年までみたいな“どうやって抑えればいいんだよ”というしんどさはなくなった。自分の中である程度抑える形、プランができてきた。それに打たれたら、フランキー(G・フランスア)が助けてくれるので(笑)。逆に敗戦だったら誰も助けてくれませんからね。今は後ろにいるので安心して投げられる。イニングの途中から上がるときも(アウト)1個でいいんだ、2個でいいんだと。3アウトよりも少ないと考えれば、どうにかなるかなって」

 重圧すら笑い飛ばせるほどに強くなった。緊張と緩和の絶妙なバランスが最大の魅力かもしれない。

【次ページ】 大一番であってもマイペースは変わらない。

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中村恭平
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