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200m自由形で日本勢初の銀メダル。
松元克央と伸び悩みを打破した名将。 

text by

田坂友暁

田坂友暁Tomoaki Tasaka

PROFILE

photograph byHiroyuki Nakamura

posted2019/07/25 11:50

200m自由形で日本勢初の銀メダル。松元克央と伸び悩みを打破した名将。<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

200m自由形で日本人初となる銀メダル獲得。東京五輪まで1年というタイミングで松元克央の成長は心強い。

長所は“練習から逃げない強さ”。

「彼の良いところは、練習から逃げないこと」と鈴木コーチは話す。

「高地合宿でもしっかりと本人なりに追い込んで頑張っていました。それが今回の結果につながっていると思います。そういうところは、(アテネ五輪銅メダリストの)森田(智己)に似ているところはあります」

 以前、冬場のトレーニング時に首を寝違えて全く動かなくなってしまったことがあった。普通の選手なら練習が始まる前から泳げないと決めつけて、「泳げそうにないので休みます」となるところだ。

 しかし松元は「とりあえず泳いでみます」と言って水に入る。このときは結果としてろくに泳げなかったのだが、その後は陸上で体幹トレーニングやストレッチなど、できることをひと通りこなしていた。

 自分がどんな状態であれ、練習から逃げたり、途中で諦めたりすることは絶対にしない。その努力は、自分を裏切らないことを松元は知っているのである。

「鈴木先生に喜んでもらいたい」

 松元がよく口にする言葉がある。

「鈴木先生に喜んでもらいたい」

 鈴木コーチはほめないことで有名だ。いくら結果を残しても、「まあまあだな」という言葉が返ってくる。

 事実、松元が日本人初の快挙となる銀メダルを獲得した今大会のレース後、松元に会った鈴木コーチは笑顔で「まあまあだな」と松元に声をかけた。そして、こう続けた。

「まだ上がいるからな」

 そう、やはり鈴木コーチの頭には世界一しかないのである。そして、松元はそのことをよく分かっているし、自分が目指すべき到達点がそこであり、鈴木コーチとなら絶対に達成できると心から信じている。

【次ページ】 「だから来年は金メダルを獲って」

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