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ユース出身選手の帰還を実現させた、
Jクラブと大学が結んだ10年間。 

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平野貴也

平野貴也Takaya Hirano

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/04/16 07:00

ユース出身選手の帰還を実現させた、Jクラブと大学が結んだ10年間。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

大学と湘南を経て、今季“古巣”に戻ってきたMF石川俊輝。大宮アルディージャは育成年代でも好成績を残すなど、強化が実を結び始めている。

Jクラブと大学の業務提携、メリットは?

 そんな折、大宮から1つの選択肢を提示された。大宮が業務提携を結んでいた東洋大(当時、関東大学リーグ2部)への進学だった。石川は「提携していなければ、東洋大という選択肢はなかったと思う。アルディージャから指導者が派遣されているから、練習の質は高いだろうと思ったし、スタッフには(ユースを卒業しても)『継続的に見ていきたい』と言ってもらえた。トップチームの練習に参加できる可能性もほかの大学より高いと考えた」と東洋大を選んだ理由を明かした。

 大宮が東洋大と業務提携を結んだのは、石川が高校1年生だった2007年のことだ。東洋大側から指導者派遣の打診を受けたことがきっかけだった。両者の業務提携には、様々なメリットがあった。

 大宮アルディージャの西脇徹也強化本部長は「クラブとしては、指導者が実戦経験を積むチームが増える。ユースの選手にとっては、場所や知名度で大学を選ぶことが多い中、アルディージャのスタイルでやっているサッカーを継続できる場所を作って選択肢の1つとして提供できる。また、東洋大に良い選手が入ってくれば、トップチームで獲得に動きやすくもなる」と提携のメリットを挙げた。

 石川が東洋大へ進学した当時、派遣されていた監督が西脇強化本部長であり、コーチが現ヘッドコーチの原崎政人である。

活動拠点を移転、交流は活発に。

 東洋大は、群馬県邑楽郡の板倉キャンパスを拠点に活動していたが、提携後は埼玉県さいたま市に隣接する朝霞市の朝霞キャンパスに人工芝グラウンドを新設して拠点を移した。大宮ユースが拠点とするNTT東日本志木総合グラウンドと、東洋大朝霞キャンパスは5kmほどしか離れておらず、大宮はユースやジュニアユースの活動でグラウンドを借りられるというハード面のメリットも得た。

 また、距離が近くなったことで、現在も多くのクラブスタッフが大学へ視察に訪れている。試合の際には相手選手も含めて大学サッカー界の情報を収集し、派遣した指導陣とチーム作りや選手育成について意見を交わすことができるからだ。

【次ページ】 強化が実り始めた東洋大、プロ選手も。

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