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W杯王者の指揮官デシャン告白。
「頂点に登り詰めたが、人生は続く」 

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レミー・ラコンブ&フランソワ・ベルドネ

レミー・ラコンブ&フランソワ・ベルドネRemy Lacombe et Francois Verdenet

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photograph byRichard Martin

posted2019/03/05 07:00

W杯王者の指揮官デシャン告白。「頂点に登り詰めたが、人生は続く」<Number Web> photograph by Richard Martin

若きエースストライカーは、チームに合流してすぐに攻撃の核となり、成熟したチームプレーを見せた。

このチームは何より“デシャンのチーム”。

――しかし一般的な印象では……このフランス代表はグリーズマンやポグバ、ムバッペよりもあなたのチームです。

「そう言ってもらえるのは嬉しいが、僕はそう思いたくない。たしかに誰かひとりの名前は挙げにくい。ただそれは逆にグループの力による偉業だったということだ。

 世代間の融合が鍵だった。

 若い世代と30代を、中間の世代が融和した。真の意味でコレクティブな勝利であり、23人の選手と20人のスタッフたちの勝利だった。

 僕らは55日間、まるまる24時間を一緒に過ごした。その間、もめ事は何ひとつなかった。能力以上の高い期待をかけられながら、成功を目指して最大限の努力をし続けた」

――グループがこれだけ早く高いパフォーマンスを発揮できると思っていましたか?

「EURO2016から14人選手を入れ換えて臨んだのだから、想像するのは難しかった。経験が何よりも重視される大会で、EUROもワールドカップも経験していない選手がたくさんいた。道さえ踏み外さなければ、彼らは2年後、4年後にさらに素晴らしいパフォーマンスを発揮するだろう。

 EUROからワールドカップまでの2年間を振り返れば、トップレベルのアスリートにとって2年はとても長いことがわかる。僕らは同じグループではなくなった。

 僕自身も1996年から1998年にかけて同じことを経験した。2年後のEURO2020も同様だろう。代表がこれからどうなっていくのか、僕にもよくわからない」

23人のW杯メンバーを選ぶ苦悩。

――あなたの第1の勝利は、この23人のグループを作りあげたことではないですか?

「最初の重大な決断であり、正しい決断でもあった。大きな大会に臨む際の選手リストは、10日間で2試合をおこなうときのリストとは異なる。最終的な決断を下す前に、何日もかけて分析し、熟考しながらスタッフと議論を重ねた。2016年(EURO)の経験が役に立った。とても微妙な決断だったが……」

――ローラン・コシェルニー(最終段階で23人から外れロシア行きを逃した)が、フランスの優勝に個人的には苦痛を感じたと告白したことをどう受け止めていますか?

「人間的なリアクションだと思う。

 最近、レイモン・ドメネクと話す機会があったが、彼も優勝は喜ばしいが2006年(決勝でPK戦の末にイタリアに敗退)を思い起こすとルサンチマンを感じると言っていた」

【次ページ】 「彼は気持ちを吐露するべきではなかった」

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