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昌子源がフランスで大切にする事。
「ここは鹿島ではないと割り切る」

posted2019/03/04 12:30

 
昌子源がフランスで大切にする事。「ここは鹿島ではないと割り切る」<Number Web> photograph by Noriko Terano

リヨン戦の敗北は、昌子源にとって衝撃的な体験だった。それでも彼は、望んでこの場所にやってきたのだ。

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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Noriko Terano

 フランスリーグ1の古豪でもあり、歴史的に見れば、フランス随一のクラブと言っていい。現在はPSGが独走するリーグで3位と苦戦しているリヨンだが、それでも貫禄は変わらない。3月3日にそのホームスタジアムへ乗り込んだのは、15位のトゥールーズFCだ。

 開始10分にリヨンが先制、15分にトゥールーズが同点に追いついても、リヨン優勢の流れは変わらない。30分にやすやすと勝ち越し弾を決めると、35分にはPKで3点目をマークする。後半にも3回ゴールネットを揺らした。1本はオフサイドでノーゴールとなったが、5-1と圧倒した。

「レベルの差を前半から痛感してしまった。なんか、子どものように扱われて、非常に苦しかった。早く試合が終わってくれとこんなに思ったのは初めてだった。鹿島でレアルとやったときにもそんなふうに思ったけど」

 試合終了から約1時間後、ミックスゾーンに姿を見せたトゥールーズの昌子源はそう振り返った。1月に移籍してから約2カ月。カップ戦を含めて9試合にフル出場を続けて来たが、初めての上位チームとの対戦は昌子に大きな衝撃を与えた。

「やっとトップレベルのチームと対戦できる、リヨンとやれるというワクワク感はもちろんありました。徐々にフランスのサッカー、選手との間合いを掴めてきたなという手ごたえみたいなものを感じ始めていた。だから、すげー楽しみにしていた。ここで自分がいかにできるかと思っていたから。

 でもなんか、天国から地獄に落とされた。結構メンタル的に落ちるけど、次の試合まで1週間あるので、しっかり切り替えてやっていくしかない」

1対1の対応でもまったく歯が立たず。

 多分、ロッカールームで気持ちを整理するために必要な1時間だったのだろう。それでも、試合を振り返る言葉は重い。1対1の対応でも、まったく歯が立たなかった。もちろん体格差もあるし、スピードも違う。なによりも、日本人にはないアジリティを持った一流選手が相手だ。そう簡単に阻止できるわけではない。

 身体能力で劣ることは承知している。だからこそ、間合いを読む、考えることで、その差を埋めなくてはならない。それでもその判断を上回る能力が相手にはあった。

「日本にいた時と同じ対応の仕方をやっていると、ボールがとれない。相手はバランスを崩しているのに、最後に足だけが伸びてきて、知らない間にピョンってかわされている。こちらの感覚的には相手は体勢を崩しているし、マイボールやのに、足だけが残っているんです。

 今日も左のメンディは、左利きで左足にボールを持つ。絶対縦に来るってわかっているのに、クロスまで上げられてしまう。これは多分、日本にはいない相手。これを知りに来たわけだから。でも、いい経験をしたで終わらせられる点差じゃない。これから、このレベルの相手との間合いを掴めるようにならなくちゃいけない」

【次ページ】 鹿島の選手は負けた後は笑えない。

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