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マンCに「0-6」のチェルシーだが、
サッリ解任の決断を下すのは尚早。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2019/02/18 13:00

マンCに「0-6」のチェルシーだが、サッリ解任の決断を下すのは尚早。<Number Web> photograph by Getty Images

メガクラブ同士の一戦でこれほどまでのスコア差がついてしまうのは珍しい。サッリ体制のチェルシーにとって正念場だ。

サッリの英会話は問題ない。

 スコラーリ体制下で「サンバ色」が浸透しなかった要因には、英語が苦手なブラジル人指揮官のコミュニケーション不足があった。その点サッリの英会話力は、会見での様子を見る限りスコラーリよりも確実に上だ。

 いざとなれば助監督のジャンフランコ・ゾラ、コーチのカルロ・クディチーニら、通訳としても有能な補佐役がスタッフにいる。無敗で過ごした開幕から3カ月間は、独特な攻撃的スタイルの通称である“サッリ・ボール”を素早く浸透させたとして、イングランド国内でも広く評価されていた。

 サッリ体制下ではビラスボアス体制下とは違い、主力との関係悪化も見当たらない。第23節アーセナル戦(0-2)後には選手たちの「メンタリティ」を批判し、続くボーンマスにも敗れると試合後に控え室で40分以上も缶詰めにする荒療治に出た。その3日後、チームはハダーズフィールドに大勝(5-0)し、前向きな反応を見せた。

 そして迎えたマンC戦。勇気ある攻勢を試みるという、指揮官が意図したはずの入り方をした。

 ところが前半4分以降は惨劇となり、今季最低となる6位へと順位を下げた。ただ5位アーセナルとは勝ち点、得失点差は同じで、得点数が異なるだけ。4位に浮上したマンUとも勝ち点差1に過ぎず、どちらも安定性に欠ける。まだ浮上のチャンスはあるだろう。

弱点が疑問視され始めた中で。

 サッリは、ともに前シーズン2位のチームを引き継いだスコラーリやビラスボアスとは違い、昨季5位からのスタイル変更に取り組んでいる事実も留意すべきだろう。

 ただメディアでは、ワンパターンな采配が弱点として指摘され始めている。マンC戦では、ジョルジーニョのフル出場が疑問視された。しかし、そうした中でも「私には自分の信じるサッカーしかない」、「チームが完全に私なりのサッカーをして敗れたわけではない」と語るほど「マイ・フットボール」に対する信念は強い。

 それを受け入れたからこそ、チェルシーはサッリを新監督に迎えたのではないか?

 4-3-3システムをはじめ、同ポジションを入れ替える選手交代まで、基本的に固定メンバーとなる戦い方もナポリから引き抜く時点で承知していたはずだ。

 ナポリから来たジョルジーニョにしても、セリエAよりもフィジカル要素が強く、テンポも速く、疲労と相手の徹底マークを受けた。そこから精彩を欠き始めたにもかかわらず代役がいないことも事実だ。

 ボールハントよりもゲームメイクを求める指揮官が3センターの中央で、エンゴロ・カンテが外れるのも無理はない。レアル・マドリーからレンタル移籍中のマテオ・コバチッチが試され始めたが、現状では説得力に欠けるパフォーマンスと判断せざるを得ない。

【次ページ】 2月の5試合が正念場。

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