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2番に最強バッターを置くことへの
抵抗感と高揚感を歴史から考える。

posted2018/12/12 08:00

 
2番に最強バッターを置くことへの抵抗感と高揚感を歴史から考える。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

先制点が大事、とは野球界で何度も言われる。ならば最強打者をなるべく早い打順に置く手は一理ある。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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Hideki Sugiyama

 ウチは2番に最強のバッター置いてるからね……。

「秋の熊野」でいなべ総合高(三重)の尾崎英也監督にそう言われてから、この「2番打者最強説」がずっと気になって仕方がない。

 といっても、同校が初めてトライした“手法”ではない。

 古くは、黄金期の西鉄ライオンズ(現・西武ライオンズ)が1955年頃に「2番・遊撃・豊田泰光」で実際にその威力を発揮し、近くでは2017年にパ・リーグ3位からクライマックスシリーズに進出して、ペナントレースの“台風の目”となった東北楽天ゴールデンイーグルスが、外国人選手を2番から3人並べて重量打線を形成し、他球団の投手たちの脅威となった。

 2番カルロス・ペゲーロ、3番ゼロース・ウィーラー、4番ジャフェット・アマダー。

 ペゲーロ、アマダーはともに190cm前後、体重は3人とも100kg台の巨漢たちが30本前後のホームランを叩き込み、試合前半で勝敗を決定づけてしまう豪快なゲーム展開は、実に痛快だった。

相手にダメージを与える点の取り方。

 その中で特に、送りバントを使わない「攻撃的2番打者」として興味深い活躍をしたのが、カルロス・ペゲーロだった。

 2017年、その頃の先頭バッターは茂木栄五郎がつとめることが多かった。試合開始直後、先頭の茂木が一塁に出ると、2番ペゲーロが長打ですぐに追いかけてあっという間に無死二、三塁。もしくは、ペゲーロが放り込んで、またたく間に2点を先取。

 そんな場面を何度か目の当たりにして、なんだか野球の新しい高揚感を味わったものだ。

 同じ失点でも、守る側にとって強烈なダメージが伴う失点の仕方というものがある。

 もちろん「逆転サヨナラ」なんてのはその最たるものだろうが、「短時間であっという間に点を奪われる」のも心がボッキリと折れそうな、かなり強烈なショックになるものだ。

 攻撃力を高めることをテーマに練習するとしたら、たとえば「5分で2点奪う練習」とか「10分で5点奪う練習」……そんな練習をしてみたらよいと思う。

 練習でそれが可能になったら、相手を精神的に破壊できるような“質”の高い攻撃力を獲得できるに違いない。

 それには、間違いなく「2番打者」がキーマンになってくる。

【次ページ】 野球はそもそもアメリカサイズだった。

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カルロス・ペゲーロ

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