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WBCでは得られない東京五輪対策。
日米野球で秋山翔吾が体得した技。

posted2018/11/14 14:30

 
WBCでは得られない東京五輪対策。日米野球で秋山翔吾が体得した技。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

高校、大学でも経験したことのないという、自身初めてのランニングホームランも決めた秋山翔吾。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Nanae Suzuki

 怒涛の逆転劇だった。

 2点を追いかける9回、先頭の代打・田中和基外野手(楽天)が四球で出塁すると、すかさず二盗し上林誠知外野手(ソフトバンク)の適時打で1点差。さらに送りバントの1死二塁から田中広輔内野手(広島)の中前適時打で追いついた。そしてハイライトは二盗、悪送球、四球で迎えた1死一、三塁で菊池涼介内野手(広島)を迎えた場面だった。

 マウンドのジョン・ブレビア(セントルイス・カージナルス)がモーションを起こすと、菊池がスッとバットを構えて一塁前にバントを転がす。すかさず三塁走者の田中広がスタートを切ってホームに滑り込んだ。

 赤ヘルコンビで決めた決勝のセーフティースクイズだ。

「ちょっと打球が強かった。(自己採点は)30点くらい」

 菊池の自己採点だったが、盗塁あり送りバントありで最後にスクイズという日本らしい機動攻撃が炸裂した快勝劇に、日米野球初開催のマツダスタジアムにはファンの大歓声が響いた。

基本はスモールベースボール。

「もちろんこういう足や小技を使った攻撃というのは必要になってくると思いますよ」

 こう語るのは金子誠ヘッドコーチだ。

 稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンが見定める2020年の東京五輪。最終目標の金メダルを考えたときに、日本の大きな武器になるのは、こうしたスモールベースボールであることは間違いない。

 そのことを改めて実証した試合でもあった。

 ローテーション投手やクローザーを務める投手がいない今回のメジャーリーグ選抜チーム。第2戦では序盤から日本打線が爆発したが、それでもここまでその他の3試合ではマウンドに上がる投手をなかなか打ち崩せていない。この試合も7回までは6安打の無得点と“二線級”の投手陣に抑えこまれた。

 スモールベースボールによる逆転劇も日本らしさなら、これもまた日本打線の現実なのである。

【次ページ】 問題は動くボールだけではない。

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