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インテルの「運命の男」ベシーノ。
ボールはいつも彼の所に飛んで来る。 

text by

手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byUniphoto PRESS

posted2018/10/25 10:30

インテルの「運命の男」ベシーノ。ボールはいつも彼の所に飛んで来る。<Number Web> photograph by Uniphoto PRESS

マティアス・ベシーノは元来ゴールで評価されるタイプの選手ではない。しかし勝負強さというのは存在するのだ。

目の前の現実にフォーカスしてこそ。

 ミラノダービーの92分の決勝ゴールは、右サイドのタッチライン際からベシーノが入れたクロスから生まれる。少しだけカーブがかかったボールは、ゴール前でイカルディを警戒していた守備者の上空を抜け、ファーサイドに逃げながらフリーとなったイカルディはしっかり頭で合わせるだけでよかった。

 ニアポスト寄りのポジショニングでクロスに備えていた、ミランのGKジャンルイジ・ドンナルンマは虚を突かれた。虚を突かれ、ほんの一瞬にせよ対応が遅れたのは、ベシーノがまさかのタイミングでクロスを入れたからだろう。

 アントニオ・カンドレーバからのスペースへの縦パスに追いついたベシーノは、そのままだとタッチラインを割りそうな、しかもバウンドしていたボールを止めず、一撃のクロスで防ぎに近寄ってきた守備者の脇を抜いたのだ。走りながら1タッチ目で長い距離のクロスを蹴るという高難易度の選択にしても、クロスの直前にゴール前をほんの一瞥しただけなのに綺麗に描かれた絶妙の軌道にしても、たまたまだとすれば出来すぎだ。ベシーノにしてみればイメージ通り、狙い通りのアシストだったに違いない。

 ベシーノが体現しているのは、次の真理ではないか。

 未来を自ら切り開くには、目の前の現実にしっかりフォーカスするべきだ。

 多くの選手の足が止まり、集中力を切らしてもおかしくないアディショナルタイムの92分であればなおさら、目の前の現実にフォーカスできる者こそ、希望する未来への扉を開けやすくなる。

 劇的なゴールを決めるにしても、重要なアシストを供給するにしても、あるいは目に見えない誰かの導きとしか思えない結果を掴み取るにしても――。

 運命を変え、未来を切り開くには、目の前の現実にどれだけフォーカスできるか、ではないだろうか。

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