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広島の中心は鈴木誠也と大瀬良大地。
昨年戦力になれなかった2人の逆襲。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byNanae Suzuki

posted2018/10/17 08:00

広島の中心は鈴木誠也と大瀬良大地。昨年戦力になれなかった2人の逆襲。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

今季は鈴木誠也が打率.320、30本塁打、94打点、大瀬良大地が15勝7敗、防御率2.62とエースと4番の役割を果たした。

ロマンチストというよりリアリスト。

 毎日のように打撃は変わった。いや、打席ごとにも変わることもあった。「僕は打席でも攻めていたい。自分の間合いで打つことを考えています」。理想の打撃を追い求めるようなロマンチストではない。目の前の打席で“H”ランプをともすことに執念を燃やすリアリストなのだ。

 だからこそ、打撃練習は試合での引き出しを増やす場。習慣のように見入る国内外のプロを問わない打撃映像でヒントを探り、ベッドの中でもイメージを膨らませる。

 スイング始動の感覚を変えたいときに、グリップを高く上げて構えるエンゼルスのマイク・トラウトの打ち方を真似たことがあった。

「感覚的にすごくいい」

 打撃練習では極端に真似して振ってみる。ただ模写ではない。あくまで打席での引き出しを増やし、イメージを残す作業。タイガースのミゲル・カブレラの打ち方を試したこともあった。

不恰好でも、Hランプをともすために。

 心技体。今季は体に不安を抱えたものの、心と技でカバーした。

「フリー打撃ではカンカン打てる選手が試合で打てないのは、メンタルだと思うんです。僕は打席でも攻めていたい。自分の間合いで打つことを考えています」

 18.44の間で勝負する投手に対し、もっとも打てる確率の高い形で臨む。それが不格好なものでも関係ない。ただ“H”ランプをともすことに注力を注いできた。

 最後まで順風満帆だったわけじゃない。再発の不安がつきまとっただけでなく、9月以降は、27試合で打率2割5分5厘、4本塁打、14打点と数字が伸びなかった。

「打てていないのは分かっている。でも、こういうときを味わいたい。ここで自分がどう変われるか、戻せるか。そういう苦しさも味わっておきたい」

 2年前のような苦境を乗り越え、再びあの舞台に上がろうとしている。

【次ページ】 大瀬良にとっては2014年以来の先発。

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