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セリエCから這い上がったインザーギ。
情熱と欲望でボローニャを統率中。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byUniphoto press

posted2018/09/26 16:30

セリエCから這い上がったインザーギ。情熱と欲望でボローニャを統率中。<Number Web> photograph by Uniphoto press

ポジショニング勝負でゴールを量産した“ピッポ”インザーギ。ミランでは苦汁を味わったが、監督業でそのしたたかさを再び発揮するか。

ハングリー精神を取り戻すために。

 想像できるのは、感覚を常に研ぎ澄ませておくために、全身から不純物を取り除こうと努めていた可能性だろう。インザーギと言えば、敵の守りの裏を取る鋭い飛び出しだけでなく、こぼれ球がなぜか目の前に転がってくる幸運でも知られていた。しかし、あれはただ幸運だったわけではなく、五感をフル活用して情報をキャッチし、常に先を読んでいたからこそ、こぼれ球が目の前に転がってきたのかもしれない。

 感覚を鋭敏に保っていたのはストライカーとしての責務を果たすため、すなわちゴールを奪い続けるためであり、ゴールへの強烈な“飢え”を保ち続けるためにも食生活を徹底管理していたのだと、そんな想像もできなくはない。

 そうした積み重ねの結果でもあったのか、インザーギの現役時代は栄光に彩られるものとなった。ミランで現役を引退した後も、当時の権力者(アドリアーノ・ガッリアーニ副会長)の庇護の下、指導者転身3年目にしてその名門クラブの監督を任された。

 インザーギは一度谷底に落ちる必要があったのかもしれない。まずはサプートの言う「欲望」を、すなわち自身のハングリー精神を取り戻すために。さらには個人の節制だけでは力の及ぶ範囲が限られる監督業で、選手たちの「情熱」に火をつけ、チームを結束させる術を学ぶためにも、だ。

開幕4試合を終えてノーゴール。

 思い出すのは、現役時代のインザーギが重要なゴールを決めた後の“咆哮”だ。ひどく飢えていたからこそ、満たされた瞬間に歓喜の感情が爆発し、獣が叫び声を上げるような咆哮となっていたのではないか。

 ボローニャの新監督に就任したのは今年の6月半ば。

 チェアマンのサプートには、こんな意気込みを伝えている。数年のうちにEL出場権を獲得したい、と。過去10季のボローニャの順位は、17位(2008-2009)、17位、16位、9位、13位、19位、2部4位、14位、15位、15位(2017-2018)と推移してきた。

 EL出場権を獲得するには、6位以内(もしくはコッパ・イタリア優勝)という上位進出が必要だ。意気込みは“野望”とも言い換えられる。新監督に「ファイアー&デザイアー」を求めていたサプートにとって、インザーギの新監督就任は必然だったのかもしれない。

 インザーギにとっては4季ぶりとなるセリエAで、ボローニャは開幕から1分3敗と大きく出遅れた。4試合を終えて勝ち点1。節ごとの得点は0、0、0、0と、ゴールがひとつもないままだ。

【次ページ】 堅守構築こそピッポ監督の手腕。

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