“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昨季不調だった大前元紀が激変!
大宮で復活した“点取り屋”の誇り。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/02 11:15
流通経済大柏時代からゴールへの嗅覚は抜群だった大前元紀。大宮アルディージャのJ1復帰へ、後半戦も得点を量産する。
俺は周りに理解してもらってこそ。
最大の低迷と言えるシーズンだった。だが、彼は転んでもただでは起きなかった。苦しみの中で忘れかけていた“初心”を手にしたのだ。
「自分のプレースタイルを改めて考えると、俺は個人で打開するタイプじゃない。俺の動きを周りに理解してもらって、連係で活きてくるタイプなんです。移籍1年目からすぐに活躍する選手もいるけど、俺の場合はコミュニケーションを何度も重ねて、自分のプレーというものを理解してもらわないと活かされない。
昨年はコンスタントに試合に出られなかったし、監督も2回代わって、そのたびに監督に自分を理解してもらう必要性があった。FWではなくサイドでプレーすることもありましたし、非常に難しさは感じたけど、凄く貴重な経験ができたと思っています」
“もう一度、自分という選手をきちんと理解をしてもらおう”。厳しい目にさらされる中でも、大前は周囲とのコミュニケーションを怠らなかった。
「自分がこう動いたら、ここに欲しい」、「この位置でボールを持ったら、自分を見て欲しい」と、チームメイトに要求し、動きを研ぎ澄ませた。これが結果的に、今季のプレーに直結していく。
5試合連続ゴールで本領を発揮。
大前元紀の価値は下がった――。
そんな評価が聞こえることもあった。実際、彼の耳にも届いたが、今季を迎えるにあたって、不安は一切なかった。
「周りの理解度が上がっているのは分かった。あとは監督に認められて、試合に使ってもらえるように努力するだけ。怪我をしないで試合に出続けられれば、結果を残す自信はあった。自分の価値をもう一度高めたいという思いが強かった」
迎えたJ2開幕戦こそ、出番が来たのは終了間際の90分だった。だが、第2節の町田ゼルビア戦で先発出場すると、2-3で敗れたものの1ゴールをマーク。そして第6節のアビスパ福岡戦で試合を決定づけるゴールを叩き込み、第7節の松本山雅戦で2試合連続ゴールをマークした。
本領を発揮したのは第20節の京都サンガ戦から第24節の徳島ヴォルティス戦にかけてだ。この期間で5試合連続ゴールを挙げ、得点ランキングトップに立った。大前も充実ぶりをこう話している。
「周りもだいぶ俺のプレーを分かってくれるようになった。上手く引き出してもらっていると思います」