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ヤクルト復活を支えるキーマン。
「一塁・坂口智隆」の存在感。 

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浜本卓也(日刊スポーツ)

浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto

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posted2018/04/23 11:30

ヤクルト復活を支えるキーマン。「一塁・坂口智隆」の存在感。<Number Web> photograph by Kyodo News

昨季は136試合に出場しチームトップの打率.290を記録。前向きな性格と実力でチームに欠かせない存在となっている。

畠山離脱のピンチを救う殊勲の打撃。

 そして3月30日、DeNAとの開幕戦。坂口は「6番一塁」でスタメンに名を連ねた。正一塁手の候補だった畠山和洋が、オープン戦期間中に下半身のコンディション不良で離脱。一塁手坂口の成長度が、そんなピンチを救った。バットでも初回の先制適時打を含む4安打2打点。「(一塁は)使ってもらったからには、チームが勝つためにしっかり覚悟と責任を持ってやろうと思った。チームが勝って良かったです」。新たな“部署”でもきっちり結果を出したその顔は、充実感と安堵(あんど)感で満たされていた。

 ただ、万事順調というわけではない。4月3日の広島戦。1点リードの6回一、二塁に逆シングルでゴロを捕球後、ベースカバーに入った原樹理との呼吸が合わずに悪送球。2者が生還し、逆転を許した。でも、坂口の心はくじけなかった。失敗を糧にしようと、懸命に一塁の守備練習に取り組んでいる。不慣れなポジションに、肉体的にも精神的にもきついはずだが「新たな挑戦も含めて、チャンスの幅をいただいているので、何もネガティブにとらえることはなかったです」。坂口の表情はいつも晴れやかで、何よりも全力だ。

宮本コーチの発案がもたらしたもの。

 取り組みの当初、坂口の一塁挑戦は一塁のレギュラーにしようというものではなく、あくまでも試合途中でのオプションの1つにという方針だった。メジャーから7年ぶりに青木宣親が復帰したことで、昨季の外野陣を担った坂口と雄平のどちらかがベンチを温める可能性が出てきた。一塁手畠山は故障あけで、全試合フル出場は厳しい状況。2年連続で3割近い高打率を残す坂口一塁が選択肢に入れば、戦術の幅が大きく広がるはず――。宮本ヘッドコーチの発案で、“坂口一塁プロジェクト”はスタートしていた。

 それが、今や外野用と一塁手用の2つのグラブを手にする坂口の姿は、ヤクルトの練習風景になじんでいる。坂口本人はもちろん、周囲の尽力の成果で、一塁手坂口に違和感はさほど感じなくなった。宮本ヘッドコーチは「言い方は変かもしれませんが、普通に一塁をやってくれています。おかげで若い外野手も使えますし、選択肢が増えてチームにも厚みが出ている。何よりも、バッティングで打ってくれているのが大きいですね」と、坂口一塁がもたらす効果の大きさを口にした。

【次ページ】 “仕事”への純な欲求と向上心。

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