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巻誠一郎の生き様が熊本に重なる。
試合も震災復興も走り続ける日々。

posted2018/04/14 08:00

 
巻誠一郎の生き様が熊本に重なる。試合も震災復興も走り続ける日々。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

巻誠一郎のプレースタイル、人間としての熱量は今も変わっていない。熱い男なのだ。

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph by

J.LEAGUE

 巻誠一郎は、走る。

 交代で入ってくるだけで周りの温度がグッと、ババッと引き上がる。

 184cmの大きな体躯を揺らしながら、ボールホルダーに対して迫力あるプレッシングを前後左右で発動する。追い込んでボールを奪ったら、前へ。途切れることのない荒い息遣いは、執念の証左でもある。

 4月8日、町田市立陸上競技場、アウェーの町田ゼルビア戦。

 故郷に戻り、ロアッソ熊本で5年目のシーズンを迎える37歳の巻は残り7分のタイミングでピッチに入ってきた。タッチラインで「ナイスゴール!」と得点を挙げた皆川佑介を拍手で迎え、勢いよく駆け出していく。

 大宮アルディージャを指揮した渋谷洋樹監督を迎えた熊本は、ここまでプレーオフ圏内に食い込む健闘を見せている。

 サイドの強みと皆川、安柄俊、巻と前線のエアバトルの強み。ストロングポイントを活かすスタイルそのままに、この日もゴールを奪った。

 一方、今季負けなしの町田はコンパクトな守備から執拗に裏を狙ってくる。最後まで息をのむ攻防が続き、ラストのワンプレーで熊本は同点に追いつかれた。走りまくった巻も、肩を落とすしかなかった。

 熊本サポーターの待つゴール裏に向かうと、メンバーには温かい拍手と声援が注がれた。

 何も特別ではない光景かもしれない。だが巻誠一郎は、メンバーは、この当たり前の光景を噛みしめているようにも映る。支えてくれる、応援してくれるありがたさを胸に刻む。震災以降、これこそがいつもの光景なのかもしれない。

震災でも、巻誠一郎は走った。

 2016年4月14日夜、熊本に震度7の大地震が起こった。

 そして16日未明には再び震度7の本震が起こり、熊本は甚大な被害を受けた。

 巻誠一郎はとにかく“走った”。

 避難所に救援物資を届けて回り、声を掛けて人々を励ました。全国にいる友人や知り合いに支援の輪が広がった。届いたものを、心をこめて配る。子供たちの笑顔を取り戻すために、即席でサッカー教室も開いた。

 復興支援サイト「YOUR ACTION KUMAMOTO」を立ち上げ、募金や物資の支援を呼びかけた。地震の発生からずっと困っている人たちのために彼は走り続けてきた。

【次ページ】 巻が発表したメッセージ。

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