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本田圭佑をVVVに推薦した“先生”。
吉田と川島に通じる名古屋での秘話。
posted2018/03/20 17:00
text by
中田徹Toru Nakata
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
頼まれたら嫌と言えないのが、セフ・フェルホーセン(70歳)の性分だ。
2008年1月、PSVの暫定監督に就いたのも「チームが大変だ。助けてくれ」と頼み込まれたからだった。そのシーズン、見事にフェルホーセンはチームを立て直し、PSVをオランダリーグ優勝に導いた。
「もう私は指導者を引退する」
そうフェルホーセンは宣言し、30年に渡る指導者生活に終止符を打ったが、周りが放っておかない。彼が生まれ育ち、今も住むリンブルフ地域のVVV、ローダJC(共にオランダ)、ヘンク(ベルギー)が「ちょっと力になって欲しい」と頼んでくると、結局、フェルホーセンはアドバイザー役を務めてしまう。
引退宣言から10年、やっとフェルホーセンは忙しい日々から解放された。
名古屋の監督として本田をVVVに推薦。
VVVのハイ・ベルデン会長も、フェルホーセンを頼りにした。名古屋グランパスエイト(当時)の監督を務めていた頃、ベルデン会長が「日本人選手を獲得したい。誰か推薦してくれないか?」とアドバイスを求めてきた。
生真面目なフェルホーセンは「頼まれた以上、そのアドバイスは良いものでなければならない」と思ったという。しばらく時を置いてから、フェルホーセンはベルデン会長に本田圭佑を推した。
「日本に来るに当たり、私もじゅうぶん準備したつもりだったが、実際に来てみると思っていたことと違ったことが起きた。日本人プレーヤーがオランダリーグでプレーするということは、もっと大変だと思う。ここで成功するためには西洋の文化・生活、異なるサッカー観、人間性や食生活の違い――そういったことに順応できるメンタルの持ち主であることが絶対に必要なんだ。
日本にはたくさん、素晴らしい選手がいる。トップクラブ、浦和レッズの選手の技量の高さは、私にも分かる。しかし、名古屋の監督である以上、私には彼らの人間性が分からない。その点、本田圭佑はテクニックがある上、素晴らしい人間性を備えている」