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星野仙一、最後の提言。
「競技普及のために野球くじの導入を」

posted2018/03/01 11:40

 
星野仙一、最後の提言。「競技普及のために野球くじの導入を」<Number Web> photograph by Masaki Fujioka(Shogakukan)

球団監督時代から球界を広く見渡し、将来に向けての提言が多かった星野氏。北京五輪日本代表の監督も務めた。

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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Masaki Fujioka(Shogakukan)

 プロ野球のキャンプたけなわの2月21日に那覇市で12球団の代表者が集まった。「中期経営計画小委員会」という。プロ野球は1つの会社ではなく船団のようなものだから、利害が違うもの同士も話し合い、和をもって貴しとする。なんとか同じ方向を向き、船を進めていこうとするわけだ。この時の会議で話し合われたのは「スポーツ振興くじ」。いわゆる野球くじの導入に向け、検討をしませんかというものだ。

 超党派のスポーツ議員連盟から、2年前にも打診された経緯がある。このときはオーナー会議で否決。その後、プロ野球選手による賭博問題が発生し、立ち消えとなっていた。ところが昨年、再度検討してはくれないかと要請があった。実は戦後間もなくは「野球くじ」が存在した。現在は「サッカーくじ」が普及していることもご承知の通り。それならば「野球くじ」を復活させることには大きな問題はないのではないかというわけだ。

「報道では12球団で反対しているところはないなどとされているが、そんな簡単なものではない。すなわち賛成と受け取られては困る。早急に答えを出すのではなく、慎重に議論していくべきものでしょう」

 あるセ・リーグ球団の代表は、早ければ来季からという報道に戸惑いを隠さなかった。まがりなりにも一度はオーナー会議で否決した議題だ。再検討もそこそこに、はいやりましょうといくはずがない。

野球をやりたい子供への環境と、財源。

 お金がからむ「野球くじ」となれば、賛否両論あるのは当然だ。そんなときに筆者が思い出したのが1月4日に亡くなった星野仙一氏の言葉だ。星野さんははっきりと「野球くじ」導入の必要性を訴えていた。

「オレはな、野球をやりたい子供たちに環境をつくってあげたいんや。そのためには財源が必要なんだ。キャッチボールをやろうにもグラウンドがない。社会人野球はどうなっとる? 休部や廃部……。今は企業がお金を出せる時代じゃない。じゃあ、プロ野球がやらなきゃいかんだろう。そこにプロもアマもない。だってオレたちもアマチュアの卒業生じゃないか」

 星野さんはどんなことに対しても「反対派」のことも考えていた。なぜ躊躇するのか。この場合、野球の普及に異を唱える人はほとんどいないだろう。不安なのは賭博性が強まること。そしてその先にはびこるかもしれぬ八百長だ。

【次ページ】 「八百長できん方法を考えようや」

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