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森岡隆三監督が体感したJ3の実態。
限られる予算とバス移動10時間。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2018/01/04 17:00

森岡隆三監督が体感したJ3の実態。限られる予算とバス移動10時間。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

森岡隆三にとって初のトップチーム経験は苦いシーズンとなった。しかし鳥取での戦いはまだ続く。

ガイナーレが掲げるテーマは「強小」。

――飛行機を使えれば楽に移動できるけれど、できないのは経費が原因ですか?

「もちろんそれもあります。でも、単純に地元の空港から飛んでいる飛行機が限られているので、たとえば、数多くの路線がある最寄りの伊丹空港から乗るとなれば、そこまで4時間ほどかけて移動しないといけない。J3のチームの多くがバスで移動していると思いますが、ガイナーレには地理的な困難さもあると思います」

――そういうコンディション調整が、成績にも影響する。

「そこは僕の経験不足、力不足だったと思います。10数時間のバス移動後にどうコンディションを回復させるのか、現役時代やコーチ時代の経験もあてになりませんでした。練習の量、質も考え直す必要性があったと思いますが、移動中のバスの中やサービスエリアでの体操も含め、あらゆる面でもっと工夫できたのではないかと反省しています。」

――ガイナーレの置かれた状況の厳しさが伝わってきますね。

「ガイナーレが掲げているテーマは『強小』です。小さいけれど強いという意味ですね。その言葉から僕がイメージするのは、大相撲の舞の海さんです。柔よく剛を制す確固たる戦略を持って、舞の海さんは戦っていたと思います。戦略を遂行するためには、相手の分析をはじめ、準備が必要です。充分な食事や休息、身体を常にケアをすることはもちろん、彼のスタイルに共感し、サポートしてくれる人達の存在など、いろんなものが整っていないと『強小』にはなれないはず。それはガイナーレも同じだと思っています。

 ガイナーレが抱える課題は確かに多いです。人口は少ない、企業が少ない、地の利もあるとは言えない……。でも、そういうないない尽くしの状況を悲観しても何も始まらない。それをわかったうえで、僕は鳥取に来たわけですから。想定外のこともたくさん経験しましたけれど、ないない=『しょうがない=仕様がない』は、ないですよね。皆で意見や知恵を出し合えば『仕様はある』はず。

 だからこそ、サッカーで得られる喜びや楽しさ、サッカー文化を鳥取に根付かせたいという想いが強くなっています」

――そのために必要なことは……。

「もちろん、一番わかりやすいのは、チームを強くすることでしょうね。勝てるチームを作ってJ2へ昇格すれば、また昔のような盛り上がりを得られると思うけれど、勝ち続けられなければ、今のような状態に戻る可能性もあると思うんです。勝つか負けるかという2択にクラブの未来を託すのは、非常にタフだなということを、鳥取に来てJ3の監督になって考えるようになりましたね。

 地域の賑わいがそのままクラブの賑わいになるし、クラブの賑わいが地域の賑わいになる。そういうサイクルというか、繋がりをうまく作らないといけない。今でも地元の人たちの中には『ガイナーレってなんだ』という人もいると思いますが、今季ピッチ上で、チームのテーマに掲げてきた『繋がる』『繋げる』と同じように、地域の人と繋がり、いつかガイナーレの夢が地域の多くの人たちの夢になるように繋げていきたいです。でもまずは認知してもらうこと。米子では年長者のグラウンドゴルフが盛んですが、まずはマイクラブを持つところから始めたいと思います(笑)」

【次ページ】 ピッチの上のことだけ考えていては回らない。

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