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SB東浜、広島薮田、DeNA山崎の魔球?
亜細亜大出身投手がCS席巻の秘密。
posted2017/10/18 11:45
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
Kiichi Matsumoto
そこで注目したいのが、両リーグで今季初めてタイトルを獲得した2人の投手。ソフトバンクの東浜巨が最多勝、広島の薮田和樹が最高勝率に輝きました。
彼らの共通点は亜細亜大出身であること、そして独特の変化球を操ることです。
Number931号(7月13日発売)では広島・九里亜蓮、DeNA・山崎康晃を加えた4名に、巷で「亜細亜ボール」と呼ばれる謎の変化球について連続インタビューを行い、真相に迫りました。
試合は大詰め。9回裏ツーアウト満塁。絶体絶命のピンチに迎えるバッターは4番。フルカウントから最後に選ぶボールは唯ひとつ! ピッチャーはマウンドで吠える。
「いけぇ! 亜細亜ボールだぁぁ!!」
……あ、亜細亜ボール?
この頃、巷を賑わせるこのボール。フォークにもスプリットにも見える“沈む魔球”は今季活躍目覚ましい亜細亜大学出身のソフトバンクの東浜巨、広島の九里亜蓮と薮田和樹、DeNAの山崎康晃の4投手が武器として使う。この球を「亜細亜ボール」と呼ぶ動きは2014年頃から一部メディアやファンの間で起こった。「亜細亜ツーシーム」という呼び名もあるようだ。
東浜が大学4年のとき、3年だった九里と、2年だった薮田と山崎の4人が、野球部の寮の4人部屋で一緒に暮らしていたという。そこで夜な夜な、この“沈む魔球”の伝授が行われていたとか、いないとか。
「いや、だから、あのボールはシンカーですよ」
このボールが「ツーシーム」として広まったのは、'15年に華々しくプロデビューした山崎がそう呼んだことが大きい。どう見てもツーシームの変化ではないのだが、大学時代にこの決め球を伝授してくれた東浜が「ツーシームとして教えてくれた」ことへの敬意としてそう呼んでいる。
九里も薮田も同じ。このツーシームは、東都大学リーグ通算35勝、史上最多22完封、420奪三振という伝説の大先輩・東浜から直接の教えを受けた大切なボール。亜大は4投手が在籍した'11年秋から'14年春まで、戦国東都で6季連続優勝を成し遂げた。
ならば、この魔球「亜細亜ボール」の正体は、始祖である東浜に見解を求めればすべて解決するはず。我々は福岡へ飛んだ。
「シンカーです」
……すみません。今、なんと。
「いや、だから、あのボールはシンカーですよ。なぜか世間ではツーシームとして広まっていますけど、僕は高校1年の秋に覚えてから今まで、一貫してシンカーだと思ってます」
なんということか。「亜細亜ボール」どころか、ツーシームですらなかった。