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出雲駅伝の途中棄権はなぜ起きたか。
金哲彦が分析する、駅伝の特殊さ。

posted2017/10/18 07:30

 
出雲駅伝の途中棄権はなぜ起きたか。金哲彦が分析する、駅伝の特殊さ。<Number Web> photograph by Kyodo News

13時05分にレースがスタート。午後の陽射しは強く、季節はずれの暑さとなった。

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金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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Kyodo News

 大学駅伝で予想外のアクシデントが起きた。

 東海大が絶対王者の青山学院に競り勝ち、10年ぶりに優勝した今年の「出雲全日本大学選抜駅伝」。

 両校が抜きつ抜かれつのつば迫り合いをしている裏で、ショッキングなアクシデントがあった。

 序盤の1区、岐阜経済大学3年の武隈泰貴選手が第1中継所を目前にして脱水症状で倒れ、途中棄権。救急搬送された。

 さらに、後半の4区でも法政大学2年の強矢涼太選手が脱水症状により第4中継所手前で走行不能に。同じく救急搬送され、2日間の入院を余儀なくされた。

 テレビ中継を観戦していた駅伝ファンの驚きは、大きかったに違いない。

コース上の温度計は28度、湿度も高かった。

 途中棄権となった一番の要因は、急激に上がった気温である。現地の出雲でも「2日前までは涼しかった」とのこと。

 10月に入り涼しさに慣れてきた選手の体にとって、急な気候変化はカウンターパンチのようなものだ。

 気象庁発表の最高気温は25度だった。しかし、コース上に設置されていた温度計は28度。さらに、湿度も高かった。

 バイクリポーターを担当していた私でさえ、季節外れの半袖ウェアがちょうどいいくらいだったのだ。直射日光も強く、体感温度は30度を超えていたと思う。

 とはいえ、出雲駅伝は距離が短い。

 全距離45.1キロは、2戦目の全日本大学駅伝の半分にも満たない。

 箱根駅伝と比較すると、たった2区間分でしかないのだ。

 今の学生長距離ランナーは、1年生でさえ20キロを走りきれるトレーニングを積んでいる。夏合宿ではさらに高い気温の中で走りこんでいる。1区間が5.8~10.2キロの出雲駅伝は、短いと感じているはずである。

【次ページ】 「ひ弱になったなぁ」という言葉も聞こえたが……。

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