スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
なぜ明治大学は箱根を失ったのか。
「反撃のシナリオ」なき予選落ち。
posted2017/10/17 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
NIKKAN SPORTS
箱根駅伝予選会。
15kmを過ぎて明治に「黄信号」がともった。
明治は15kmの通過点で10位。11位の東京国際大との差は1分11秒あったが、17.5kmの地点では、その差が2秒にまで縮まっていた。
経験上、これは完全に逆転されるパターンだ。前半抑え、後半に追い上げてくるチームは、一気にタイム差を縮め、上位のチームを抜き去る。
レースが終わり、当落線上の学校にとって、発表までの時間は長い。明治の選手たちを取り囲む人の輪には、不安が広がっているように感じられた。あまり、言葉が発せられない。
1位の帝京大から始まった結果発表だったが、8位の発表時に雨脚が強まった。
9位は上武大学。そして10位は――東京国際大だった。
11位に日大。12位は創価大。その頃になると、明大関係者の沈黙はより重たくなった。当落線上に絡むことも出来なかったのか――。その現実に、みんなが呆然としているように見えた。
これほどの「不幸の連鎖」は珍しい。
明治は、東京国際大と2分31秒差の13位だった。
近年の予選会でこれほど「不幸の連鎖」に見舞われた大学は珍しい。
エースの坂口裕之(3年)が前日から「頭がくらくらする」と訴え、レース当日になっても状態は上向かずに欠場。そしてレースが始まると、坂口に次ぐ走力を持つ三輪軌道(2年)が給水所でのアクシデントに見舞われ、途中棄権してしまう。
西弘美監督は「飛車角が抜けてしまった」と嘆いた。
実際、このふたりが抜けた影響は、タイム差にして「5分」にも及ぶと見られる。
いつもは淡々としている西監督だが、この日ばかりは想定外の出来事に戸惑いを隠せなかった。