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松井大輔が語るポーランドでの戦い。
「ドラクエで言えば別のダンジョン」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2017/09/22 11:30

松井大輔が語るポーランドでの戦い。「ドラクエで言えば別のダンジョン」<Number Web> photograph by AFLO

キャリアで10クラブ目となるオドラ・オポーレ。未知の環境を常に求める松井大輔は、今も楽しそうだ。

カズさんに「俺、引退します」とか言えないよ。

――環境を変えることで、成長のきっかけをつかむというのが松井大輔流の生き方のように思います。

「ずっと同じクラブで長くプレーできるというのは、すごいことだと思う。でも、人それぞれに生き方があるから。俺はそういうタイプじゃない。ずっとひとつのところにいたら、井の中の蛙になりそうで、嫌なんだよね」

――自分の知らない世界があると知れば、行ってみたくなる。

「ドラクエで言えば、別のダンジョンでしか手に入らない新しいアイテムがあるかもしれない。だったら、そこにチャレンジしたいと思うんだよね」

――海外へ移籍する選手も増えました。しかし短期間でJリーグへ戻る選手も少なくない。そういう現状をどう思いますか?

「選手それぞれに生き方があるように、どこでプレーするかも人それぞれ。ヨーロッパが合っている選手と、日本が合っている選手がいて、当然だと思う。だから、日本へ戻るのは負け犬じゃない。日本だろうと海外だろうと、自分に合っているチームを探すのが、選手の生きる道だと思う」

――36歳まで現役でプレーしていると、10年前に考えていましたか?

「全然考えていなかった。とっくに引退していると思ってた。こんなに長くやっているとは思いもしなかった。こんなにって言っても、まだ上の人が頑張っているからね。俊さん(中村俊輔)が磐田に来て、39歳でこんなにやっているのか? すごいなぁって思ったし。シーズン前にカズさん(三浦知良)と一緒に合宿させてもらったとき、『俺は何考えてるんだ』って思ったりもしたから。

――試合に出られないとか、弱気になっている自分について?

「うん」

――そんな、カズさんに「俺、引退します」とか言えない。

「言えないよ。『体も痛いんで』なんて言ったら、『俺のこと、馬鹿にしてるのか?』って言われそうだからね(笑)」

「J1でゴールを」

 その目標を達成することなく、ポーランドへ戻った松井。しかし、彼のキャリアにとって、磐田での時間は貴重な経験になったはずだ。だからこそ、今、彼は、自身の可能性に賭ける、歩むべき道を選べたのだろう。「普通なら、日本に居ればって誰もが思うでしょ?」と自ら笑う無謀な選択であっても、だ。

「最後はフランスで」

 その想いが結実するかは誰にもわからない。それでも挑戦したいという意欲がある限り、そこへ向かう道のりを松井は楽しそうに歩んでいく。たとえ険しく、苦しい道程であればあるほど、彼の胸は弾むはずだ。

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