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松井大輔が語るポーランドでの戦い。
「ドラクエで言えば別のダンジョン」
posted2017/09/22 11:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
8月上旬、ポーランド2部リーグのオドラ・オポーレへ移籍した松井大輔。日本を発ってから約1カ月、どうしているのかと思い、連絡をとった。
「ごめん、ごめん。今洗濯していたところだったから」
こちらからかけた電話に出られなかった松井から、数分後に折り返しの連絡。洗いっぱなしかと一瞬不安に思ったが、きちんと干したというので、安心してインタビューをスタートさせた。
――洗濯って、もしかして……。
「練習着。うちのクラブは自分で洗濯をしなくちゃいけないからね。クラブハウスもル・マン時代と同じくらいだから、思ったほどひどい環境でもなかったけど」
――オドラ・オポーレは'09-'10シーズンは5部にいて、ここ3シーズンで4部、3部、2部と昇格してきたんだよね。
「今季2部に昇格したばかりだけど、まだ1敗しかしていないし2位で調子がいいんだよ(現在は3位)。こういう小さいクラブで上を目指せるのは楽しいよ」
――そんなチームのなかで、松井さんは今どんな状態なんですか?
「実はチームに合流した直後はなかなか友達ができなくて、溶け込むのに苦労した。同じポーランドのグダニスクにいた時はフランス語ができるヤツと友達になれたし、たいていチームにはブラジル人選手がいて、彼らをきっかけにして溶け込むんだけど。ポーランドの2部は外国人枠が1つしかないから、外国人は俺ひとり。周りはほとんどポーランド人で、周辺地域で生まれた選手ばかりだから、なかなか英語を話そうとしてくれなくて。俺も自分から話しかけなかったんですよ。いつもそういう感じだったし、自分が日本人だという意識がないから。いつもと同じような感覚だったけど、違ったね」
――日本人選手というのも、彼らにとっては珍しい?
「だと思う。2部に上がったら、突然日本人が来たよって感じだったんじゃないかな。グダニスクのような大都市でもないからね。『なんで、ここにいるんだ?』って、不思議がられていた」
――W杯に出たような選手がなぜ? と、距離を感じたんでしょうね。
「食事のあとにお酒を飲む機会があって、それをきっかけに話せるようになった。そこからは、もうすっごい人気者(笑)。『今日ライブあるからいっしょにどう?』って誘われたり。若い選手はいつも『お茶へ行こう』って声かけてくれるし。だんだん面白くなってきたね。やっぱり日本人は自分から、周りに飛び込んでいくようにしなくちゃいけないんだよね。これが海外なんだなっていうのを痛感したし、忘れていた感覚を思い出した」