「ピッチ上で『無心』になりたい」

　彼がサッカーを続ける限り、この不安は一生つきまとうはずだ。

　だが、今の彼にはそれを跳ね返すだけの強い心が育っている。

　今、彼の下にはあるクラブが熱烈なラブコールを送っており、それ以外のクラブも獲得に興味を示し始めているという。

「プロに行く覚悟、決意は固まっています。だからこそ、自分の中の『見えない敵』に常に打ち克つために、もっとプレーで自信をつけていき、さらにピッチ上で『無心』になりたい。

　1、2年前は『他人の膝と替えてくれ』と思っていた。でも今はこの身体こそが自分であり、向き合って会話することで道が開けてくると確信しているんで」

　辛い回り道を幾度も経験しながら、木戸皓貴はまっすぐに未来を見つめて歩き続けてきた。メスを入れた両膝を最高の旅のパートナーにしながら、これからもじっくりと着実に自らのサッカー人生を歩いていくつもりだ。