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都市対抗で36年ぶり優勝のNTT東。
セオリー無視の過激な盗塁野球の真実。
 

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byKyodo News

posted2017/07/26 17:00

都市対抗で36年ぶり優勝のNTT東。セオリー無視の過激な盗塁野球の真実。<Number Web> photograph by Kyodo News

36年ぶり2度目の優勝となったNTT東日本チーム。ナインにより胴上げされる飯塚監督。

目指したのは“1死三塁”の場面を作る野球。

 飯塚監督がNTT東日本の監督に就任したのは2014年のこと。今年で4年目を迎える。

 目指したのは“1死三塁”の場面を作る野球。

 盗塁が先で犠打が後か、犠打が先で盗塁が後かはその場のケースによるが、次のバッターが内野ゴロでも、外野フライでも、はたまた敵失でも暴投でも点が入る、より先の塁を狙うことで相手チームにプレッシャーを与える野球を目指した。

 一線級の投手を複数そろえるトヨタ自動車や日立製作所に対抗するために何をするべきか、それを追い求めた結果、前述の“セオリー破り”の走塁も飯塚監督の中では当然の策となった。

 しかし、試合で失敗すると「無謀だ」「無策だ」「何を考えているんだ」と非難の声も飛んできた。

「私が監督をやるようになって4年目になるんですけど、その間、見ている人から『なんだ、あの盗塁のアウトは』とか言われ続けたんですけど、チーム内ではそれでもオーケーという約束事でここまで進めてきました。二盗でも三盗でもオーケー。(失敗しても)ミスとはとらないです」

 この4年間、どんなことがあっても信念を変えることはなかった。

 その想いは選手、スタッフ全員に伝わっていた。

「誰であってもあそこは走っていたと思います」

 前述の三盗を決めた喜納が語る。

「結果的に目黒(聡)さんが打って勝ちましたけど、うちのチームは元から攻めの走塁だったり、バッティングだったり、守備でもですけど、攻めの姿勢を大切にしているチームです。だから自分じゃない誰であってもあそこは走っていたと思います」

 喜納はチーム内で俊足の方ではけっしてなかった。誰であっても走っていたということは、チーム内でその方針が浸透しているという証明でもある。

 6回裏に同じく1死二塁の場面で三盗を決めた下川知弥が、喜納の言葉を補足する。

「当然確信もありましたし、なんのためらいもなく自分も行けました。戦術的なことなので細かい話はあれですけど、試合前にチーム内で確認していたことですし、塁に出てから決めたことではないです。それをたまたま僕も実践したというだけで、たぶん僕じゃなくても走っていたと思います」

 失敗を恐れず常にアタック&チャレンジを続ける姿勢。野球に限ったことではない人として大切な部分を、飯塚は野球をとおして若い選手達に教えてきた。

【次ページ】 積極的なプレーによる失敗は、ミスではない。

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