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韓国女子ゴルファーには勝てない!?
キム・ハヌル、イ・ボミらの壮絶秘話。 

text by

キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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photograph byGetty Images

posted2017/07/16 09:00

韓国女子ゴルファーには勝てない!?キム・ハヌル、イ・ボミらの壮絶秘話。<Number Web> photograph by Getty Images

メジャー大会であるワールドレディスサロンパスカップで優勝した時のキム・ハヌル。今季すでに3勝しており、その快進撃はまだ続いている。

ボールを1個しか持っていないのに大会で優勝。

 中学生の時、ある試合に出場したキム・ハヌルは、その時ボールを1個しか持っていなかったというのだ。

 それを見かねた父親が「ゴルフ場のショップでボールを買ってこい」と言い、財布を丸ごと娘に渡した。彼女はショップに行って、1スリーブ(3個入り)のボールを買おうとしたが、その値段が日本円にして3000円ほどだったという。

 ボール1個が1000円。

 今では考えられない価格だが、当時の韓国ではゴルフが“富裕層”のスポーツであったことがよく分かる値段だ。

 キム・ハヌルが財布の中身を確認すると、全部で3000円ほどしか入っていなかった。娘は何も買わずに店を出て、父に財布をそっと返した。

「結局、ボール1個で試合に出て、2日間の36ホールをプレーしました。ボールを一度もなくすことなく、優勝したんです」(キム・ハヌル)

 みじめな思いや悔しさをバネにし、悲壮な覚悟で挑んだ結果が優勝へと導いた。

 こうした過去を今でこそ笑って語れるようになったキム・ハヌル。だが、思春期の彼女がどのような気持ちで当時、大会に臨んでいたのかを想像してみると……並大抵の精神の持ち主でないと言わざるを得ない。

イ・ボミを支えていた、苦労人だった父の応援。

 いつも笑顔のイ・ボミは2014年9月に最愛の父を病気で亡くした。

 当時の彼女の喪失感は相当なもので、みるみるうちに体重が減り悲しみに暮れる姿が本当に痛々しかった。

 イ・ボミが12歳からゴルフを始めた理由も、実は父の勧めだった。

 いつもツアーに帯同している母のファジャさんは「父が朴セリの大ファンで娘にゴルフを勧めたんです」と教えてくれた。

 父は電気技師として働いていたが、経済的なゆとりはなく、母も地元で飲食店を営業して家計を切り盛りしていた。父はゴルフ熱心で、イ・ボミを自宅からゴルフ練習場まで車で1時間30分かけて毎日送り迎えしていたほどだったという。

「今の私があるのも、父が苦労をいとわず、思い切りゴルフをさせてくれたからなんです」

 父への感謝をそう口にするイ・ボミには、必ず果たさなければならない約束があった。

「賞金女王になってほしいという約束。それを果たすためのモチベーションもありました。それが2015年と2016年シーズンでした」

【次ページ】 自分の目標より家族への恩返しが重要という価値観。

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