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男子100mをめぐる9秒台狂想曲。
本気の桐生、のんびりケンブリッジ。
posted2017/04/28 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
日本人初の100m9秒台の足音が、確実に近づいてきている。
1998年バンコクアジア大会で伊東浩司が10秒00の日本記録を樹立してから19年。多くの選手が9秒台に挑み、10秒の壁に阻まれてきた。
これまで10秒0台を記録した日本人選手は8人。朝原宣治、末續慎吾などトップ選手も届かなかった。「日本人にも9秒台を出してほしい」と願う一方で、「日本人には9秒台は難しいのだろうか」と思った人もいたのではないだろうか。
しかし2013年に高校3年生の桐生祥秀が10秒01という驚異的な記録で走って以来、男子短距離がにわかに活気づき、大きな底上げがされた。
桐生祥秀は9秒を目指し、2週連続で大会に出場。
今、最も近い場所にいるのが、リオ五輪400mリレーの銀メダルメンバー、自己ベスト10秒01を持つ桐生祥秀(東洋大)と10秒03の山縣亮太(セイコー)、そして10秒10のケンブリッジ飛鳥(ナイキ)の3選手だ。彼らは走りの特徴も性格もまったく異なるが、9秒台に向かって、それぞれのペースで順調に進んでいる。
桐生と山縣の2人は、3月にオーストラリアで合同合宿を行った後に、キャンベラでの試合でシーズン初戦を迎え、桐生は10秒04、山縣は10秒06と、それぞれ自己ベストに0秒03に迫る走りで最高のシーズンインを果たした。
桐生はそれから6週間後、4月23日の出雲陸上で向かい風の条件下で10秒08の好タイムを叩き出すなど安定感も増している。
4月29日に広島で行われる織田記念に出場予定だが、報道によると桐生は出雲陸上で9秒台を出した場合、織田記念を回避する予定だったが、10秒08に留まったため、2週連続で9秒台に挑戦する。同大会は2013年、高校3年生の時に10秒01という世界を驚愕させた記録を出した思い出深い大会なだけに、気持ちは高まっているはずだ。
山縣も同大会にエントリーしていたが、足首に痛みが出たためレースを回避。地元のファンには残念なニュースだが、焦らずに治療し、再び元気な姿でトラックに戻ってくるのを心待ちにしたい。