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代表新エース候補、久保裕也は強気。
「ゴールを決める。発散はそれだけ」
posted2017/04/14 07:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Takuya Sugiyama
その立役者の1人は、間違いなくこの男だった。
シュート精度だけでなく、突破力も身に付けた。
23歳の若武者は、どのようにして進化を遂げたのか。
2-0。ハリルジャパンは、昨年9月にホームで敗れたUAEに借りを返した。司令塔オマル・アブドゥルラフマンに対して徹底した包囲網を張り、組織と個々のデュエルで抑え込んだ。そして攻めれば縦方向を意識したアタックで2ゴールを奪う。完璧な90分間だった。
UAEのゲームプランを早々に崩壊させたのが、久保裕也の先制ゴールだった。昨年11月のサウジアラビア戦に続く、右サイドでの先発出場。前回は負傷によって前半のみで交代してしまったため、満を持して臨んだ。彼の一撃から日本は敵地での戦いに自信を手にしていく。
「あの裕也のゴールが相当チームを楽にした」と香川真司は讃え、この日のもう1人の殊勲者、今野泰幸にとっても「久保が点を取ってくれたので、すごく安心した。ホッとした」と、2年ぶりの代表戦での躍動につながった。
後半には、その今野のゴールを久保がアシストする。吉田麻也から前線の大迫勇也にロングボールが入ると、久保はすぐさま大迫をサポートできる位置に走る。ヘディングの落としを受け、冷静に左足でクロス。日本の2点目をお膳立てした。「久保が絶妙なところに出してくれた。スピード、コース、場所。すべて自分にピンポイントだった!」。今野は自分のシュートよりも、立役者のプレーを興奮気味に語った。
右足での強振シュートと、左足のラストパス。久保が生み出した2点が、スタンドを埋める白装束の男たちを黙らせた。
「少々距離があっても、コースが空いていたら打つ」
京都でプレーしていた10代の頃から、シュートセンスは折り紙付きだった。スイスのヤングボーイズに渡っても、それは変わらず武器であり続けた。
「毎日シュートは、アホみたいに打っていましたよ(笑)。シュートが上手かったら、ボールが急にこぼれてきても何とかなるやろと思って。ドリブルがあまり得意ではなかったので、シュート力を伸ばそうと。少々距離があっても、コースが空いていたら打つ。僕はスペインのダビド・ビジャが好きで。結構シンプルに足を振って点を取るじゃないですか。相手DFを半歩ズラして素早く打つ形とか、ホンマに憧れます」