「僕たちが勝てば、チームに根づくスタイルになる」

　結果が出たことで、選手たちの顔つきはみるみるうちに変わってきた。高木大は言う。

「自分たちのやっていること、チームの取り組みに自信はある。多少難しい面があっても継続していくのが大事。トライ＆エラーを繰り返し、監督から求められるプレーを自分の色にしていきたい」

　チームで10番を背負うのは、兄の高木善朗だ。

「昔のヴェルディの代名詞だったパスサッカーは、それで強かったから特長であり、スタイルと言われた。勝てなかったら、特長でもなんでもないでしょ。僕たちが勝ち続ければ、やがてチームに根づくスタイルになる」

　その顔には、負けるのはもうたくさんだと書いてある。

　4月9日のJ2第7節、東京Vにとってはリーグ序盤の山場として挑んだ湘南戦は、2－3の敗北に終わった。ロティーナ監督は落ち着いた口調でゲームを振り返る。

「湘南は昇格候補で、上位4つに入ってくるだろうチームです。彼らのアドバンテージは、何年間も同じプレースタイルを継続していることにある。一方、我々はまだ3カ月ほどしか経っていません。その点ではまだまだ相手にアドバンテージがあります」

　かつての栄華は色褪せ、一時はJ3降格の危機に瀕した東京Vは、ここから這い上がろうとしている。高木大をはじめ、緑のシャツの輝きをまぶしく見つめた選手たちが新たな歴史をつくろうとしている。その息吹が感じられるのはたしかだ。