野球善哉BACK NUMBER
安楽智大の232球から4年、今年も……。
WBCの球数制限とセンバツの野放図。
posted2017/04/02 08:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
あれから4年――。
この偶然をどう受け止めていいのか。あの一件から4年が経つ。
2013年春のセンバツ大会。当時、済美にいた安楽智大(楽天)が初戦の広陵戦で延長13回232球の力投を演じた。この出来事は、日米のメディアを巻き込んでの大論争となった。「勝利」と「育成」の狭間で、甲子園の在り方が問われた。
時を経て、2017年。
大会3日目の1回戦・滋賀学園vs.東海大市原望洋の試合で、東海大望洋のエース金久保優斗が延長14回218球を投じ、滋賀学園の背番号「10」棚原孝太投手は192球で完投勝利を挙げた。
まだある。2回戦の福岡大大濠vs.滋賀学園戦は延長15回までもつれて引き分け。福岡大大濠のエース・三浦銀二が延長15回を完投。球数は196球だった。また、2回戦・健大高崎と福井工大福井の試合も延長15回引き分け。健大高崎のエース伊藤敦紀は2度マウンドに上がり、195球を投じた。福井工大福井のエース・摺石達哉は11回で降板しながら、球数は193に達した。
WBCで球数制限が設けられている一方、センバツで熱投。
4年の歳月を経て起きたこの“事件”を結びつける理由は、ともにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催された年だからだ。
WBCでは、投手を守るために球数制限、登板間隔制限が設けられている。
プロも参加する大会で投手を守るためのルールが採用されている事実は、多くの野球関係者・ファンが認識しているはずだ。だとすれば、センバツ大会で起きたこれらの“熱投”に違和感を覚えた人もいたのではないだろうか。