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DeNAの“もっと評価されるべき”捕手。
新人・戸柱恭孝の密かなる貢献度。
posted2016/10/05 11:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
9月29日、横浜一筋25年、“ハマの番長”こと三浦大輔が現役最後のマウンドに上がった。12安打10失点と打ち込まれながらも7回途中を119球、熱投と呼ぶにふさわしい最終登板だった。
「このまま時間が止まってくれればなと……」
引退セレモニーでそうつぶやいた三浦の姿に、選手もファンも涙を隠さず、試合後の横浜スタジアムは感動一色だった。
時は、1年前に遡る――。
2015年9月29日、ベイスターズを覆う空気は残酷なほどに重かった。
その夜、甲子園でのタイガース戦は、3対3の同点で9回裏に突入する。まず先頭、三上朋也の暴投(振り逃げ)で無死一塁。次打者はバント、これを処理した三上の送球を一塁手ロペスが捕りこぼして無死一、三塁。続く代打・関本賢太郎の打席ではアウトコースの変化球を捕手の嶺井博希が後ろに逸らした。
1つのアウトを取る前に3つのミスをおかしてサヨナラ負け。チームは最下位に転落し、中畑清監督(当時)も「ギブアップだな」と、指揮官としての禁句をついに口にした。バッテリーエラーが多発したシーズンを象徴する負け方だった。
ワーストタイ68暴投の改善を新人ながら託された。
昨季の68暴投はプロ野球ワーストタイ記録だ。暴投は投手を対象に付される記録だが、捕手のスキル、とりわけ手前でワンバウンドするボールを体を張って止め、前に落とす技術の高さにも大きく左右される。
昨季は、嶺井(先発出場61試合)、黒羽根利規(同42試合)、高城俊人(同40試合)の3捕手が併用された。端的に言えば「正捕手不在」。新任のアレックス・ラミレス監督が、当初から捕手の見極めに時間を割いたのは当然の成り行きだった。
2016シーズンの開幕を間近に控えた3月8日、球団は横浜市内の商業施設で、ファンを集めての壮行会を開催した。その目玉は「現時点でのベストオーダーを発表!」。ラミレス監督の呼びかけに応じて、1人ずつ選手が壇上へと姿を現す。「7番・セカンド 飛雄馬」に続いて、新指揮官は高らかに捕手の名を読み上げた。
「ハチバン、キャッチャー、トバシーラ!」