“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ユース世代No.1選手が京都サンガへ。
岩崎悠人という驚異のスピードスター。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/08/04 11:30
高校1年の時からレギュラーを務め、選手権には2年連続出場。岩崎は1年ですでに大会優秀選手に選ばれていた。
非凡なスピードを誇る若い選手にありがちな壁とは?
ただここ最近、スピードを武器とする選手にありがちな、無理にスピードアップをして引っかかったり、次のプレーのイメージに身体が追いつかない、サイドからのカットインに自信を持ちすぎてワンパターンになってしまうといった兆候も見られた。
このままのプレーでは、周りのレベルがさらに上がったり、経験豊富な選手や海外の猛者たちの前では「プレーが分かりやすい選手」になってしまい、簡単に対策を立てられてしまう。それこそが“スピードアタッカー”がプロに入って陥る、もっとも大きな難関なのだ。
しかし高校生の段階でそれに気付くことは至難の業で、多くの選手はプロになって周りのレベルが一気に上がってから気付くことになる。そこから修正する力を発揮できる選手は、決して多くない。
ドイツ・ザンクトパウリに所属するFW宮市亮、アーセナルに移籍をした浅野拓磨も、プロに入って「スピードの活かし方」の重要性を理解し、修正することを始めた選手たちだ。
だが、岩崎はそれを高3の段階でやってのけている。それがあのシーンに現れていたのである。
「真ん中でプレーすることの重要性を感じるように」
試合は岩崎がPKを決めて、一度は2-1とリードするが、終盤に追いつかれ、PK戦の末に敗れた。
試合後、「楽しかった。ここで負けてしまったけど、チームのみんなとやるサッカーがこんなに楽しいのかと、改めて実感出来た」と高校生らしい表情を浮かべる彼に、「あのシーン」について聞いてみた。すると、彼はこうコメントした。
「インターハイ予選から、ゴール前の真ん中でプレーをすることの重要性を感じるようになりました。どうしてもサイドに流れてから、カットインとかサイド突破を仕掛けがちでしたが、それだけでは厳しいと感じるようになったんです」
ツートップの一角を務めてきた彼だが、そのプレーは徐々に単調になっていた。これは宮市亮が高校時代に陥っていた状況とほぼ同じである。そこに閉塞感を覚えた岩崎は、まずは自分のプレーポジションを真ん中に移し、その中でもう一度、自分のスピードの活かし方を考えるようになっていたのだ。
「これまでは完全に相手を抜いて、スピードに乗ってからシュートを打っていたんです。でも、真ん中でプレーする機会を増やしたことで、代表などで海外に行ったときに、自分より大きい選手に対して飛ばされることもあった。狭い中でも、パッと瞬時にボールを止めて、その状態から正確なシュートを打てるようにならないといけないと感じたんです」