“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-16代表を鍛える“森山イズム”。
世界で戦うための育成法とは?
posted2016/06/21 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
サッカーU-16日本代表。このチーム名を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、バルセロナの育成組織で育ち、現在はFC東京U-18に所属するMF久保建英の名前だろう。
もちろん、彼が注目すべき選手であることは間違いない。だが決して勘違いして欲しくはないのは、このチームは決して“久保建英のチーム”ではないということだ。
彼以外にも日本のサッカーの将来を担うタレントたちはいるし、何より期待して止まないのは、彼らを率いる代表監督の人間性と育成術である。
6月22日から鳥取で開催されるU-16世代の国際大会「インターナショナルドリームカップ2016」で日本代表の監督を務めるのが、48歳の森山佳郎である。
広島ユースを名門に育て上げた熱い“森山イズム”。
現役時代はサンフレッチェ広島、横浜フリューゲルス、ジュビロ磐田、ベルマーレ平塚でプレーした。現役引退後の2002年に指導者として広島ユースの監督に就任すると、心技体のすべてに全力でアプローチする熱い指導で、田坂祐介、高萩洋次郎、森脇良太、柏木陽介、槙野智章、茶島雄介、野津田岳人らを輩出。多くのタイトルを獲得し、広島ユースを下部組織の名門へと育て上げた。
“森山イズム”と称するその熱い指導に筆者も魅了され、何度も試合や吉田グラウンドに足を運んだ。広島の吉田グラウンドでは、技術系や判断系の新しいトレーニングを取り入れながら、紅白戦では容赦ない球際の攻防と競り合いを求めていた。そして、厳しい指導の中でも持ち前のユーモアをちりばめ、選手たちをリラックスさせる術も持ち合わせている。まさにチームの緩急を、絶妙なタイミングでバランスよくとることができる人物だった。
彼が率いるチームの試合ぶり、特に終盤の集中力と執念は凄まじく、いつしか「サンフレッチェ広島高校」、「執念の広島ユース」と呼ばれ、森山監督の「気持ちには引力がある」という言葉は、チームのキャッチフレーズになった。
2014年、タイで開催されたAFC U-16選手権・準々決勝でU-16日本代表は韓国に敗れた。U-17W杯出場を逃したその試合の直後、次のU-17W杯(2017年・インド)を目指すチームが立ち上がり、森山監督に白羽の矢が立った。