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SUVで24時間レースに参戦!?
C-HR Racingがニュル24時間に挑む理由。 

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大串信

大串信Makoto Ogushi

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photograph byTOYOTA

posted2016/05/26 13:00

SUVで24時間レースに参戦!?C-HR Racingがニュル24時間に挑む理由。<Number Web> photograph by TOYOTA

全トラブルを片っ端からその場で解決していくレース現場。「課題への解決方法が早く導き出せるようになった」とはチーフメカニック大阪晃弘のコメント。

レースに出れば、開発のスピードが上がる利点が。

 シェイクダウンテストはもちろん、ニュルブルクリンクで開催されたクォリファイレースでも古場はステアリングを握って走り、C-HR Racingの仕上がり具合を確かめている。

 開発者自らが走ることにはそれなりに意味があると古場は言う。

「最大の利点は開発のスピードが高まることです。結果として同じ所へ行き着くにせよ、1台のクルマを仕上げる間には試行錯誤が必要で、テストドライバーの意見を聞いて考えるよりも、自分で実際にステアリングを握って感じたほうが詳細な現象がわかって、それならこうしようというアイデアがすぐに出てくることがあります。たとえばプロドライバーの影山(正彦)さんが『ちょっとリヤの安定感が足りない』と言ったとき、リヤの安定感と一口で言ってもコーナーのターンイン、ミドル、立ち上がりと状況によっても、速度域によっても、コース形状によっても意味がまったく違ってきますが、自分で乗っていれば確認のための質問もしやすく、より細かいクルマのセッティングの方向が見つけやすくなります。今の状態がどういう経緯でなり立っているのかが、自分で開発しているので、よくわかって対応もしやすいんです」

 もともとベース車両のC-HRの開発責任者であったことも良い方向で働いた。

 古場自身は以前から、C-HRでニュルブルクリンク24時間レースをはじめとするVLN(ニュルブルクリンク耐久レースシリーズ)を闘いたいと提案。昨年の夏に参戦が決定し、社内メカニックによる実際の作業が始まったのは昨年12月だったという。

実はTOYOTA 86と同じサイズ!?

 クロスオーバーSUVという性格のクルマにとって、サーキットでのレースというまったく異なる用途に向けた改造は難しく見えるが、外部から感じるほどではなかった、と古場は言う。

 C-HRはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)のCプラットフォームを採用しているため、TNGAの部品群の中から用途に合うものを選び組み合わせることで、クロスオーバーSUVをうまくレース用に、それも短時間でアジャストしていくことに成功したのだ。

「C-HRはクロスオーバーSUVということで背が高く、性能的にはどうしても不利なので車高を落として重心高を下げる必要がありました。ただ、C-HRは、TNGAのサスペンションメンバーにスペーサーをかませて車高を上げていましたから、それを取れば車高が下げられ、同じTNGAを使うプリウスと同サイズのタイヤが使えるようになります。

 このサイズはニュルブルクリンクのレースを闘ったことのあるTOYOTA 86と同じなので、実績ある競技用タイヤを流用できます。開発には苦労というよりおもしろさを感じました。クロスオーバーSUVでレースに出るのか、と驚かれますけど、そういう意味では作りやすかったんです」

【次ページ】 軽量化の果てにエンジンが残り、重量配分が前になる。

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