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ル・マン初制覇をターゲットに、
最強マシンTS050 HYBRIDで挑むトヨタ。

posted2016/06/09 10:50

 
ル・マン初制覇をターゲットに、最強マシンTS050 HYBRIDで挑むトヨタ。<Number Web> photograph by TOYOTA

WECの第2戦スパ・フランコルシャンにて。レースでは2位を大きく引き離してトップを独走し続けたが、トラブルのため惜しくも下位フィニッシュに。

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赤井邦彦

赤井邦彦Kunihiko Akai

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「夜のユノディエールの直線はね、どこまでも終わらないんじゃないかと思うほど、走っても走ってもきりがない。そんな時は夜空に輝く星を見るんだ。晴れていると、満天の星が導いてくれるような気がする」

 友人のベテラン・イギリス人ドライバーは、まるで詩人のような言葉でル・マンの魅力を語ってくれた。今から随分と前、ユノディエールにシケインと呼ばれる不粋なクランクが設置される前のことだ。ユノディエールというのはル・マン24時間レースが行われるサルト・サーキットの一番長い直線。その距離約6km。友人はその6kmもの直線を、アクセル全開、時速約400kmで走りながら、夜空の星と会話をする。

 そんな話を聞くだけで、ル・マン24時間レースが人々の心を掴んで離さない理由が分かるだろう。

 ドライバーはスピードに酔い、詩人になり、観客はドライバーの言葉に惹きつけられる。

 たったひとつの小さなミスが取り返しのつかない事態を生むことを承知で、こちらの世界とあちらの世界の境界線の上を、バランスを取りながら疾走する。それがル・マン24時間レースというモータースポーツだ。

コース上には様々な要素を含んだ難関が待ち受ける。

 今年、そのル・マンは84回目を数える。

 6kmのユノディエールの直線は2つのシケインで分断され、1本が2kmの3本の直線になった。それでも最高速度は時速300kmを遥かに上回る。

 もちろん、ル・マンの魅力はその直線と最高速だけではない。

 ミュルサンヌ、インディアナポリス、アルナージュ、ポルシェカーブ、フォードシケイン、テルトルルージュ……といった、記憶に残る名前の付いたタイトなコーナーや緩やかなカーブが次々と現れる。ル・マンを制するには、こうしたいくつもの難関をくぐり抜ける性能を備えたクルマを準備しなければならない。

【次ページ】 ル・マン挑戦は32年目になる……。

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