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超高校級が少ない今年の選抜がなぜ。
「接戦と全力プレー」で観客6万人増?

posted2016/04/04 12:00

 
超高校級が少ない今年の選抜がなぜ。「接戦と全力プレー」で観客6万人増?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

春夏通じて初優勝の智弁学園。日々の練習から「日本一」を掲げてきた努力が実を結んだ。

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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 第88回選抜大会が3月31日に幕を閉じた。印象に残ったのは、高校球児の能力を一定期間持続させることの難しさだ。私がベスト8に進出すると予想した学校は軒並み1、2回戦で敗退し、勝ち残ったのは智弁学園、滋賀学園、龍谷大平安、明石商、木更津総合、秀岳館、高松商、海星の8校。

 滋賀学園、明石商、海星の3校は大会前、伏兵としても名前が挙がっていなかった。明石商は東邦、海星は敦賀気比を2回戦で破って準々決勝に進んだだが、東邦には藤嶋健人、敦賀気比には山崎颯一郎という“超高校級”の評価を受ける本格派右腕がいて、攻撃陣もドラフト候補が中軸を形成していた。当然、優勝候補の一角に名前が挙がっていた。まさかこの両校が明石商と海星に敗れるとは、誰も思わなかったに違いない。

 各校の実力が伯仲していたのは、1点差ゲームが多いことでもわかる。昨年の5試合に対して今年は11試合あり、そのうち6試合は、大差がつくことが多い1回戦で演じられた(昨年は1試合)。準優勝した高松商は1回戦でいなべ総合と7-6の接戦を演じ、優勝した智弁学園は準決勝、決勝とも1点差ゲームを勝ち抜いて頂点に立っている。

“超高校級”は例年に比べて少なかったが。

 1回戦の高松商対いなべ総合は本当に紙一重の戦いだった。8回表までいなべ総合が6-3でリードする展開で、打者走者の全力疾走の回数はいなべ総合が機動力自慢の高松商を上回っていた。

 ちなみに、私が全力疾走の基準にしているのは打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達11秒未満」で、8回までにこれをクリアしたのは高松商2人3回に対し、いなべ総合は4人7回(最終的に高松商3人4回、いなべ総合5人8回)。ここから逆転した高松商はさすがに昨年秋の明治神宮大会覇者だが、いなべ総合が準優勝しても私はおかしくなかったと思っている。

 “超高校級”と形容されるような選手は、例年にくらべて少なかった。毎年、出場校が一通り出場した翌日、スポーツ新聞で初戦の総括を注目選手の一覧表とともに紹介しているが、昨年の49人に対して今年は41人しか一覧表に紹介できなかった。

【次ページ】 継投で勝利を得たチームが昨年より激増。

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