オフサイド・トリップBACK NUMBER
ハリルが原口元気を重用する3要因。
ユーティリティ、若さ、そして……。
posted2016/04/02 11:00
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Shigeki Yamamoto
「あのプレーは、ありなんですか?」
「すげー、今度は長友を追い越しちゃいましたよ」
W杯ロシア大会の2次予選最終節、シリア戦の後半で原口元気がボランチとして起用された途端、プレスボックスがどよめきだした。これは試合後の報道についても同様だ。「原口」と「ボランチ」という単語が、至るところでおどっている。2次予選をグループ首位で終えたことや、山口蛍が鼻骨などの骨折という大けがを負ったことよりクローズアップされたと言って過言ではない。
たしかにボランチとしての原口は、型破りなプレーを見せた。中央を猛然と駆け上がり、長友のクロスからゴールを決めたシーン以上に注目されたのは、ピッチ中央で攻守のバランスを取るという、ボランチ本来の役割を忘れたかのような動き方だった。結果、日本代表は攻勢を強める代わりに、カウンターから失点の危機にさらされる場面も数多く招いてしまっている。
かくして取沙汰されるようになったのが、負傷した山口に代えて、わざわざ原口をボランチに起用する必然性があったのかという問題だ。打ってつけの交代要員がベンチにいなかったという事情もあるにせよ、ハリルホジッチ監督が奇策に走り過ぎたのではないかと疑問を呈する人は少なくない。
ボランチ起用は昨年6月から試されていた。
原口の奔放なプレーぶりには、個人的にも衝撃的を受けた。しかし、ハリルホジッチ監督が、彼をボランチとして起用したこと自体は驚きではなかった。巷ではほとんど触れられていないが、ユーティリティープレイヤー的な起用法は、実は昨年6月のイラク戦(キリンチャレンジカップ)とシンガポール戦(W杯アジア2次予選)ですでに予兆があったからだ。ボランチとしての起用も含めて、である。
解説しておくと、まず6月11日のイラク戦で、原口は66分に香川真司に代わってピッチ上に送り出され、4-2-3-1のトップ下に入っている。5日後のシンガポール戦では、4-2-3-1から4-4-2にシステムが変更されたのに併せて、71分に柴崎岳と交替する形で途中出場。そのままボランチとして起用される形となった。
これらの采配は、きわめて驚きだった。原口はサイドからカットインしてシュートを狙う攻撃的な選手だというイメージはあっても、トップ下の印象は少ない。ましてやボランチで使われるなどというのは想定外だった。