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“オーナー”本田圭佑が描く、
SVホルンの未来と哲学。
posted2016/03/29 14:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
現役選手でありながら、彼はなぜクラブ経営の世界に飛び込んだのか。世間の常識を覆し、“有言実行”で新たな価値を創造し続けてきた29歳の野心家が描く壮大なるプロジェクトとは――。
現役選手としてACミランでプレーし、日本代表でもある僕がなぜ、オーストリア3部リーグのSVホルンの経営権を握り、“実質”オーナーの立場でクラブと関わっているのか。その根底にあるのは、自分が生まれてきて物心ついたときから魅了されてきたサッカーで恩返しがしたい、サッカーを通じて少しでも世界を変えられるようなことをやりたいということです。そのステップ1としてSVホルンの経営に携わるというアイディアが生まれた。
では、それを実行するのが“今”である必要があるのか?
そもそも僕の中では「人間いつ死ぬかもわからない」という想いが常にあります。大げさな意味ではなく、死というものを常に意識していて、だからこそスピード感にはすごくこだわりたい。そう考えると、現役の時にもやれることはあるはずだと。
もちろん、現役中に他の作業をするということのリスクは理解しています。
ミランや日本代表で1試合でも良くないプレーをすれば、必要以上に叩かれることも覚悟している。それは当然のことだし、まずはミランの10番として、そして日本代表選手として結果を出すことが最優先だというのは言うまでもありません。
24時間サッカーのことだけを考えることはできない。
でも一方で、プロサッカー選手であっても、24時間サッカーだけをやっているわけではない。僕自身も「24時間サッカーのことだけを考えています」と言ってきたこともありますが、正直なところそんなわけはない。
毎日、ウォーミングアップをして、トレーニングをして、アフターケアをする。
では、それ以外の時間を何に費やすのか?
僕はその時間こそ、絶対に無駄に使いたくはない。スピード感にこだわって、何が出来るのかを考えていくと、SVホルンへの経営参入は必然の流れだったんです。
現に、このクラブをどう強化・発展させていくかを考えて、会社(HONDA ESTILO)の人間と相談するのはとても楽しい。ある意味リフレッシュになっているし、語弊を恐れずに言えば、サッカープレイヤー同様、趣味を職業にしているという感覚です。