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世界中でF1中継が消滅の危機に!?
フジテレビスタッフに漂った“哀愁”。
posted2015/12/20 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
最終戦のアブダビGPのスターティンググリッドは、いつも独特の哀愁が漂っている。
初開催の2009年はトヨタのスタッフから珍しく「記念撮影をしてほしい」と頼まれた。トヨタがF1からの撤退を発表したのは、その3日後のことだった。
2014年は小林可夢偉がケータハムのスタッフたちとマシンを囲んで集合写真を撮っていた。まだ本人からF1からの引退が発表されたわけでもなく、ケータハムのオーナーもまだ翌年へ向けて参戦継続を模索していたが、内部の人間は「これがケータハムの最後のレース」ということをだれよりも強く認識していた。
そして、2015年の最終戦アブダビGPでは、日本のF1テレビ中継を担ってきたフジテレビのスタッフたちに、その哀愁を感じた。なぜなら、F1のテレビ放映権を統括しているフォーミュラ・ワン・マネージメント(FOM)とフジテレビとの契約が2015年限りで切れるためだ。
'12年、'14年に続き正念場となる3度目の危機。
これまでも、FOMとフジテレビが似たような状況に陥ったことはある。それは2012年と2014年である。いずれも、前年末にFOMとの契約が切れたフジテレビがFOMとの契約を更新したと発表したのは、年を越した1月下旬だった。
'87年から日本でのF1テレビ中継を行なってきたフジテレビ。その後、訪れた日本でのF1ブームにも乗って、フジテレビのF1中継は順調に視聴率を稼ぎ、F1中継はフジテレビにとって看板番組のひとつになった。
その勢いに陰りが見え始めたのは、リーマンショック以降。ホンダ、トヨタ、ブリヂストンといった日本を代表する企業がF1から相次いで撤退を決めると、フジテレビの広告収入は激減した。そのため、フジテレビは2012年にFOMと契約を更新するにあたって、1987年から25年間、継続してきた地上波での放送を打ち切り、BSでの無料放送とCSでの有料放送に切り替えると発表した。
2014年も危機に直面していたが、このときは小林可夢偉が日本人ドライバーとして2年ぶりにF1に復帰することが決定し、さらに翌年からホンダも復帰することが追い風となっていた。