「いい場面でいい仕事ができるバッターを育てたい」

　北川は2012年の現役引退後、2年間2軍打撃コーチを務めたが、今年はオリックスの企画事業部プロジェクトマネージャーとして、様々なイベントに参加したり、試合中継の解説を務めた。

　現場を離れ、外から見たことで、より客観的にチームや選手の足りない部分が見えたと言う。

「ひいき目じゃなく、第三者目線で見ることができたのはよかったと思います。そこで感じたことを、選手たちに伝えていければ。技術じゃないですよ。技術なんて、一軍にいる以上はみんなあると思うので、ちょっとしたその場での考え方とか、メンタル的なものです。例えば、逃げたようなスイングをしていた選手に、『お前、何怖がってんの？』と言ったり。それは外側にいたから言えたことだと思う。そういう、違う観点で感じたことを素直に言っていきたいと思います」

　どんなバッターを育てたいか？　と尋ねると、こう答えた。

「ホームランバッターって、日本にはそんなにいないと思うんですよ。中田翔やおかわり君（中村剛也）ぐらいじゃないですか、本当のホームランバッターは。だからどちらかというと、二塁打や三塁打を打てるようなバッター。長距離だけど、中距離に近い長距離打者、そういった選手をどんどん作りたい。そしてやっぱり、いい場面で、いい仕事ができるバッターですよね」

代打満塁逆転サヨナラ本塁打を再び。

　いい場面で、いい仕事。

　近鉄時代の2001年9月26日、代打満塁逆転サヨナラ本塁打で優勝を決めるという史上初の大仕事を成し遂げ、その後もアニメ『逆転イッパツマン』の登場曲で現れるたび、勝負強い打撃で沸かせた北川の現役時代そのものではないか。

　そう水を向けると、「そうそう、結局僕に持っていきたいんですよ。ハハハハ、というのは嘘です嘘です」と豪快に笑った。

「今年のオリックスは、チャンスはそこそこ作れたけど、“あと1本”が出なかった。そこがソフトバンクとの違いだったと思う。ソフトバンクは、ここぞというところで仕事をする選手がいっぱいいましたから」

　いい場面でいい仕事をするための秘訣は、「割り切り」だと北川は言う。

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