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ロッシとマルケス、両王者の報復戦。
マレーシアGPが史上最低のレースに。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/10/31 10:30
“キック”直前、ロッシがマルケスを数秒見つめたとき、彼は何を考えたのだろうか。
マルケス「蹴りを入れる行為は想像もできなかった」
最後にコメントを出したマルケスは、はっきりとロッシを非難した。
「彼は蹴りを入れたことを認めないだろうが、ビデオにすべてが映っている。レースだからアクシデントや接触は起きることだし理解できるが、レース中に蹴りを入れる行為は想像もできなかった。サッカーならレッドカードだが、ここでは3ポイントのペナルティだ。
レース後彼に言われたことは、できれば言葉にしたくない内容だった。普通じゃない。
彼は2度振り向いて、蹴りを入れた。それがビデオに映っている。今季もし彼がチャンピオンになったとしても、ふさわしいとは思えない。彼は今日のことを過去の出来事にするだろうけど、バレンティーノとの関係は変わっていくだろう」
これが、マレーシアGPの決勝レースが行なわれた10月25日に起きたことのすべてである。
ふたりの元王者が“泥仕合”に。
ここから先は、僕の意見である。
まず、マルケスがロッシの走りをペースを落として妨害したかどうか、という点について、ふたりがバトルを繰り広げた最初の数周については、その通りだろう。
しかし、ロッシの「彼の挑発に反応した」という言葉通り、事故が起きる前の数周はマルケスの走りに対抗して、まさに“泥仕合”へと発展していた。そして、14コーナーで事故が起きたのだ。
前回のコラムでも書いたが、前戦オーストラリアGPは、マルケス、ロレンソ、イアンノーネ、そしてロッシの順でフィニッシュした。レース中に4人の選手が抜き合った回数が52回で、過去最高のレースだと言われた。
しかしこのレースについて、ロッシがマレーシアGPの開幕前日のプレスカンファレンスで「マルケスがロレンソの味方をした」と語り、波紋を呼んでいた。そして、「本当のことを言われたことにマルケスは怒り、さらにひどいレースをしてきた」というのがロッシの言い分である。
「マルケスがロレンソの味方をした」という部分については、もしそうだったとしても、リザルトを大きく左右するものではなかった。