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ベネズエラで輝いたサブマリン。
元ロッテ・渡辺俊介の「野球人生」。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byKatsushi Nagao

posted2015/10/18 10:40

ベネズエラで輝いたサブマリン。元ロッテ・渡辺俊介の「野球人生」。<Number Web> photograph by Katsushi Nagao

WBCで世界の打者を手玉にとったサブマリン投法はいまだ健在。

渡米以来、実は渡辺の成績は右肩上がりである。

 考えてみれば渡辺は渡米以来、ずっと右肩上がりの成績を残してきた。昨季は救援と先発を兼任しながら8勝2敗、防御率3.36。後半戦はブッチ・ホブソン監督が「チームで一番安定していた」と言うほどだった。その傾向はベネズエラの冬季リーグでも強くなり、今季は7勝5敗、防御率2.93と39歳にして成績が向上している。

「こっちのバッターの特徴みたいなのは去年分かったし、相手を見ながらピッチングができるようになった。それに今年はベネズエラ出身の捕手がいるんですけど、アメリカよりベネズエラの方が日本みたいに緩急使ったり、ボール投げさせたりする……。ベネズエラのバッターに力があるから、そういう球を使わないと打ち取れないからです。アメリカはまずアウトコース低めにストライク。それ投げとけば打たれないみたいな感じだから。お国柄でいろいろある」

 そういう話をする時の渡辺は、とても楽しそうだ。

「この2年間で、日本にいる外国人選手の気持ちがよく分かるようになった。昔、二軍にいた頃、『試合に出られないんだったらアメリカに帰って試合したい』とかシーズン中に言ってた外国人選手がいて、当時は『なに言ってんだ?』と思ってたけど、ああそうだよな、こっちではマイナーでも毎日、試合に出るもんなと分かる。今ならもっと声をかけてあげられたと思う」

身につけたものを教える時に感じた言葉の壁。

 大事なことはほかにもあった。いや、周りに気づかされたというべきか。

「家族と一緒にいて、野球がしたい。そういうのはアメリカにいて強く思うようになりましたね。こっちではまず家族が一番大事なんだってのをかなり強く感じる。アメリカって自分の子供を普通に球場に呼んだりするけど、そういうのを間近に見てて、ずっといいなと思っていた」

 去年のオフ、実は渡辺のもとに「日本以外の球団」から誘いがかかっていた。彼がその選択をしなかった理由は「アジア人がアジアに帰っても埋もれてしまう」からだった。だが、そろそろ進路変更してもいい頃だ。

「ウチのチームの若い選手に教える時、やっぱり言葉の壁を感じて、もっとちゃんと教えてあげたいのに僕の英語力だと……日本語だったらと思いました」

【次ページ】 今季限りなのか、来季も投げるのか。

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