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ついに世界の頂点へ。太田雄貴が見せた円熟。
~金を掴み取った「フィンガリング」~ 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAFLO

posted2015/08/04 10:30

決勝戦では7-2から連続して5点を許し同点とされたが、多彩な攻めを見せ凌ぎ切った。

決勝戦では7-2から連続して5点を許し同点とされたが、多彩な攻めを見せ凌ぎ切った。

 モスクワで開催されたフェンシング世界選手権男子フルーレ個人で、太田雄貴(森永製菓)が日本人として全種目を通じて初の金メダルを獲得した。

 太田が世界選手権で表彰台に上がったのは銅メダルだった'10年以来5年ぶり。北京五輪男子フルーレ個人銀、ロンドン五輪男子フルーレ団体銀と続いたことで「シルバーコレクター」とも呼ばれた男は、「一つの夢、目標としていた世界選手権で金メダルを獲得できて本当にうれしい」と満面の笑みを浮かべた。

 身長171cmの小柄な身体で次々と長身選手を打ち破る、圧巻の試合ぶりだった。準々決勝では190cm超のロンドン五輪金メダリスト・雷声(中国)を15-9で下し、準決勝では183cmのゲレク・マインハート(米国)に15-9の勝利。決勝では飛ぶ鳥落とす勢いで勝ち上がってきた21歳、身長191cmのアレクサンダー・マシアラス(米国)を15-10で退けた。

身長が低くても勝てる、圧倒的な「フィンガリング」。

 長身でリーチの長い選手が有利なフェンシングで、体格で劣る太田が勝てるのはなぜか。日本チームの橋本寛監督はこのように解説する。

「彼の特長はスピードだけではなくフィンガリング(剣の操作)で他を圧倒できること。強いだけではなく、世界を魅了する、素晴らしいフェンシングなのです」

 近年は、彼自身の才能と努力に加え、コーチングスタッフや分析スタッフの力添えもあって戦術に一段と磨きがかかっていた。

 ロンドン五輪後の1年間の休養もプラスに出た。復帰してからは29歳というベテランならではの余裕を持った試合運びを見せるようになっていた。

 橋本監督は「今大会では相手に流れがいきそうになったときもうまく間を取るなど、冷静に試合を運んでいた。勝つべくして勝った」と感嘆した。

 6月のアジア選手権、今回の世界選手権と連続で金メダルを獲得したことで、今後の成績次第では世界ランク1位でリオ五輪を迎えることも現実的になっている。そのリオ五輪は、太田にとって競技人生の集大成という位置づけ。目指すのはもちろん金メダルだ。

「優勝候補の1人としてリオに挑めることをうれしく思う」

 期待も注目も、俄然高まっていく。

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