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吉田類 「野性を求めさまよう、『酒と山』放浪記」 

text by

根津貴央

根津貴央Takahisa Nezu

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/08/06 10:30

「吉田類の酒場放浪記」で知られる類さんは
全国の山を訪ねる山男でもあった。
山で飲む酒ほど旨いものはない!

好評発売中の雑誌Number Do 『わたしのホーム・マウンテン』より、
お酒、そして山を愛する吉田類さんの登山遍歴を一部公開します。

「人からよく『どこでお酒を飲むのが一番好きですか?』と聞かれるんですが、決まって答えるのは北海道最高峰の旭岳(標高2291m)。雪に穴を掘ってそこにテントを張って、雪でお湯を沸かしてウイスキーのお湯割をひとり静かに飲む。テントの中から見えるのは雲ひとつない満天の星だけ。もう宇宙船に乗っているのと同じ感覚で、最高なんですよ」

 そう語る吉田類さん。お酒が好きであることはテレビ番組「吉田類の酒場放浪記」や酒場詩人という肩書き、酒にまつわる数々の著書からも容易に想像がつく。事実、取材中も通りすがりの人に「類さん、いまからコレ?(お酒を飲む仕草)」と声をかけられたほどである。

無類の山好きで、1年の3分の1は北海道で過ごすほど。

 ただ、そんな吉田さんが、無類の山好きであることはあまり知られていない。最初の登山は、25年ほど前に登った北岳。白峰三山を縦走し、それをきっかけに北アルプスをはじめ本格的な登山に傾倒していった。なかでも北海道には造詣が深い。

「アイヌ民族の言葉でカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ばれる大雪山系の雄大な景色を知って、北海道に通うようになりました。特に、雪渓の残る大雪山系を高山植物の花々が覆い尽くす夏は素晴らしいですよ」

 その昔、北海道南部のえりも町に長期滞在していたこともある。いまもなお足しげく通っており、1年の3分の1は北海道で過ごすほど。

「大雪山系や日高山脈にはよく登りましたね。大雪山は黒岳から登る人が多いんですが、緑岳から入ると旭岳、白雲岳、トムラウシ岳とつづく縦走路があって、そのルートには一時期ハマっていました」

 基本的に単独行が好きだと言う吉田さん。独りは危険だと思われることも多いが「グループ登山も危ないんですよ。スキルの低い人がいたとしても、中くらいのレベルの人に合わせて行くのでバランスが崩れるんです」と語る。

 ただ、そんな吉田さんも二十数年前、大雪山の縦走で危険な目に遭ったことがある。

【次ページ】 低体温症になり、ビバークした場所はヒグマの生息地。

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