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藤浪晋太郎に“ミスター”の夢をみる。
~タイガースを越えた存在になれ~ 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2015/07/21 10:30

藤浪晋太郎に“ミスター”の夢をみる。~タイガースを越えた存在になれ~<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

高卒1年目から3年連続100投球回達成は、2009年の田中将大(当時楽天)以来となった。

 それはいずれもバッターの意表を突く、味わい深い変化球だった。カットボールなのに右バッターの外へ逃げるのではなく、懐のボールゾーンからインローいっぱいへ曲がってくる。そしてフォークなのに左バッターの外角低めではなく、高めから落ちてくる――。

 7月5日、横浜でのベイスターズ戦。

 5対1とタイガースがリードを4点に広げた直後の6回裏、マウンドの藤浪晋太郎は正念場を迎えていた。ワンアウト二、三塁と、ヒット1本でまだまだゲームが荒れる場面。ここで藤浪は右のアーロム・バルディリスをインサイドのカットで、左の倉本寿彦をアウトハイのフォークで、いずれも見逃し三振に仕留めたのだ。155kmのまっすぐを投げられる藤浪が、三振の欲しい場面でまっすぐに頼らないピッチングをする。今年の藤浪の安定感はこういうところからもたらされている。藤浪はこう言っていた。

「常に変わらないといけないと自分は思います。結局は相手のデータの研究と自分の能力の追いかけ合いだと思うので、相手が思っている以上のものを毎年毎年、出していかないとダメなんです」

「期待感を持たせた上で、結果を出す」(田淵幸一)

 思えば高校3年の夏、藤浪はセンバツの優勝に浮かれることなく、自分と向き合っていた。ビデオを見直して、渾身の力で投げたストレートを相手バッターに芯で捉えられている現実を見つめ、さらなる進化を試みたのである。

「あのときに考えたのは、まっすぐの伸びを磨こうということでした。目指したのは、スピードガンの数字以上に速く感じさせる、キレのあるボールです」

 現状に留まらず、上を向く。そのために目の前の努力を怠らない。躍動感あふれるピッチングだけでなく、打っても一塁へ全力で走る藤浪に、27年も空位のままの“ミスター・タイガース.を背負ってほしいと願う虎党は少なくない。3代目を担った田淵幸一さんがその資質についてこう話していたことがある。

「ファンに期待感を持たせた上で、結果を出さなくちゃいけない。重たいリュックを背負った人生になるんだよ」

 そのリュックを背負うためには、タイガースを越えた存在にならなければならない。タイトルを獲って、チームを優勝に導き、日の丸を背負う……今の藤浪には、どれも無理な注文ではないはずだ。

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