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W杯のショックを引きずった青山敏弘。
「ようやく踏み出せそうな気がする」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byAtsushi Hashimoto

posted2015/03/13 10:40

W杯のショックを引きずった青山敏弘。「ようやく踏み出せそうな気がする」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

ブラジルW杯では細貝萌らを押しのけて代表に選出された。2015年Jリーグ開幕戦のアシストには、ゴールを決めた佐藤寿人も「半分はトシのゴール」と称える。

2015年J第1号のゴールを生んだロングパス。

 2015年シーズンが始まる前、2月のプレスカンファレンスで久しぶりに彼に会った。

 チームの現状などを聞いた最後に「楽しみにしといてください」とフッと笑った。その一言で、時計の針を進めている感じが伝わってきた。

 3月7日の開幕戦、広島はホームにヴァンフォーレ甲府を迎えた。

 前半10分だった。青山はエース佐藤寿人の動き出しに合わせて後方から縦にロングパスを送り、先制点をアシストした。これが今季のJリーグ第1号となった。

 ゴールに直結する、鮮やかな一発の縦パス。この先制点がチームに落ち着きをもたらし、チームは2-0で勝利している。青山の充実ぶりが十分にうかがえる試合内容だった。

 ゲームを眺めながら、ブラジルのベースキャンプ地イトゥで彼が最後の囲み取材のなかで語った言葉を思い出した。

「広島でやり続けること。結果を出し続けること、そしてまた代表に呼ばれるようにやっていくこと」

 ハメス・ロドリゲスにわずかな間を与え、仕事をさせてしまった悔しさが消えることはない。しかし、終わったこととして片づけずに長い間立ち止まったからこそ、苦悩から解放されれば一心不乱に突き進んでいくパワーも生まれる。広島で結果を出し続け、ブラジルW杯以降は離れてしまっている日本代表への復帰を目指していく。その思いは、余計に強くなったように思えてならない。

 置いてきぼりからの猛チャージ。

 ビンテージのロングパスが、青山敏弘の何よりの決意表明である。

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青山敏弘

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