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引退する厩舎、騎手の最終日は狙い?
2人の調教師の花道は飾られたのか。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byKyodo News

posted2015/03/04 10:30

引退する厩舎、騎手の最終日は狙い?2人の調教師の花道は飾られたのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

武豊に初めてのダービーをもたらしたスペシャルウィークは、白井寿昭調教師の管理馬だった。最後に再びこのコンビが見られたことは、ファンにとっても幸せだったに違いない。

2人の調教師の最終レースとなった阪神12R。

 今年は騎手で引退する中舘英二はすでに最後の騎乗を終えていて、28日は東西5人の調教師の最後の日になった。

 中で面白かったのは阪神の最終レースだ。ここには白井寿昭、鈴木康弘というふたりの引退調教師の馬が出て来ていた。ふたりの馬はそれぞれ1番人気、3番人気と高い支持を集めていたが、それはラストランへのはなむけなどではなく、実力から見て正当な評価といえた。

 白井調教師のマノワールには武豊が騎乗していた。白井調教師と武豊といえばスペシャルウィークの名コンビである。ユタカが欲しくて欲しくてたまらなかったダービーのタイトルをはじめて手に入れたのが白井氏が管理するスペシャルウィークだった。天皇賞、ジャパンカップなども勝った名馬は、ふたりにとって忘れられない1頭だろう。

 その名コンビが最終レースで復活したのだ。マノワールは阪神のコースが得意で、このクラスで惜しいレースも何度か演じている。調教の動きもよく、うまく先行すれば、競りかけてくる馬もいそうにないので、白井調教師の引退の花道を飾るのはむずかしいことではなさそうに見えた。

マノワールの逃げ切りかと思われたが……。

 スタートよく飛び出した武豊のマノワールは、気負った様子もなく、軽快に逃げ脚を伸ばして行く。直線を向いたときは後続の馬との差も十分で、逃げ切り濃厚と思われた。

 しかし、うしろから1頭、ぐんぐん追い上げてくる馬がいた。福永祐一のハギノタイクーンである。あっという間に差を詰め、マノワールと体を並べる。白井調教師に有終の美を飾らせたいユタカとそれを阻止すべく馬を押すユーイチの追い比べは迫力があった。ほとんど同時にゴールした2頭は、写真判定の結果、ハギノタイクーンがハナ差勝っていた。白井調教師はラストランを飾ることができなかった。

【次ページ】 競馬の厳しさを見せつけたのもまた、盟友だった。

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