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侍ジャパンは「日の丸」の無駄遣い!?
興行ありきの試合に発展の道はない。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2015/02/26 11:30

侍ジャパンは「日の丸」の無駄遣い!?興行ありきの試合に発展の道はない。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

昨年の日米野球にも出場した中田翔、柳田悠岐らが選出された侍ジャパン。だが大谷翔平ら開幕投手候補はメンバーから外れ、欧州代表との強化試合は苦しい興行となりそうだ。

興行という点では、「日の丸」の無駄遣い!?

 だからファンの反応も正直だ。

 2月6日から始まった前売りの販売状況もあまり芳しくないと聞く。テレビ中継も視聴率が期待できないからか第1戦はTBSが地上波で2時間だけ放送するが、第2戦は同じくTBSのBS放送のみの中継となる。

 言葉は悪いが興行という点では、「日の丸」の無駄遣いのようなイベントになってしまっているのである。

 この寂しい状況を見たとき、2013年のWBCのボイコット騒動を思い出した。ジャパンマネーがなければWBCの大会運営はできない、ぐらいの勢いで拳を振り上げたあの騒動だ。しかし実態を見れば、それは大きな勘違いだったことを思い知らされる。

 もし、この欧州代表にMLBに所属するメジャーの一流選手が入っていれば、イベントの盛り上がりも少し変わったはずである。そのことは昨年の日米野球が示している。メンバー的には寂しいと言われながらも、8年ぶりのメジャーリーガーたちの来日に試合は盛り上がりを見せて、球場の客足も良かった。

 いいか悪いかは別として、日本のボイコット騒動に「出ないなら日本抜きでやるからいい」と言い放ったMLBの反応が、今の野球の国際化の現実なのである。

2つの国際大会で勝つこと、これ以外に侍ジャパンの道はない。

 それでは侍ジャパンは、これからどういう道を進むべきなのか。2つの大きな国際大会で勝つことを目指す以外に方法はない。

 その1つはWBCである。次回は2017年。そこを目指して小久保裕紀監督を迎え、侍ジャパンは動いている。

 そしてもう一つはオリンピックだ。

 2020年の東京五輪で野球とソフトボールが正式に競技種目に加わっても、五輪にMLBが選手を出す可能性は極めて低い。ただ、スポーツイベントとして、五輪は競技種目を乗り越えて国民的な関心事だということだ。そういう意味ではたとえメジャーリーガーが参加しなくても、国の代表としての野球にかかる期待と注目は大きい。

 この2つの国際大会で結果を残すことは、野球がファンを拡大していくための大きな入り口になる。WBCや五輪で活躍する選手の姿に、新しいファンが掘り起こされ、その選手がチームに戻ったときに、そういうファンが新たにプロ野球を支えてくれることになっていくのである。

【次ページ】 興行ありきの試合は日本の野球界にプラスなのか?

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小久保裕紀

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